J1残留サバイバルは最下位からの逆転も可能。「降格4枠」から抜け出すチームは?
今季のJ1リーグも、残すところ7試合(一部は6試合)となった。
川崎フロンターレが独走する優勝争いは、追いかける2位の横浜F・マリノスの奮闘次第ではあるものの、昨季に続いて早期決着を見そうな気配である。一方、昨季にはなかった残留争いは混迷を極めており、残りのシーズンの大きな注目ポイントとなることは間違いない。
4チームが降格するレギュレーションにより、残り7試合の時点で残留争いに関わるチームは例年に比べても多い。現時点で降格ラインとなる17位の湘南ベルマーレの勝ち点は27で、「逆転可能な勝ち点差は残り試合数とイコールで結ばれる」というサッカー界の定説に当てはめれば、勝ち点34で13位の柏レイソルまでが残留争いの当事者と言うことができる。
【残り7試合時点での下位8チーム順位表/カッコ内数字は勝ち点】13位 柏レイソル(34)14位 ガンバ大阪(33)15位 清水エスパルス(32)16位 徳島ヴォルティス(29)—————————————-(降格ライン)17位 湘南ベルマーレ(27)18位 大分トリニータ(24)19位 ベガルタ仙台(23)20位 横浜FC(22)
実に8チームが降格の危険性をはらむ一方、ダントツで最下位のチームがないのも今季の特徴と言えるだろう。現在最下位の横浜FCは勝ち点22で、残留ラインとなる16位の徳島とは7ポイント差。定説通りに行けば、十分に逆転可能な数字だ。
では、この8チームが残り試合でいかなる戦いを見せるのか。それは、もちろん「神のみぞ知る」である。ただし、いくつかのポイントを紐解けば、残留争いの行方がおぼろげながら浮かび上がるかもしれない。
ひとつは、現在のチーム状況である。
それを推し量るうえでわかりやすいのが、東京オリンピック中断明け後の各チームの成績だ。シーズン途中の補強や監督交代などを経てチームの骨格が定まり、現状のチーム力を反映した結果となっているからだ。
リーグ戦再開後の9試合で最も勝ち点を上積みしたのは、4勝2分3敗で14ポイントを稼いだ柏(13位)だ。第26節から3連勝を達成するなど、前半戦の不振を完全に払拭。その後の3試合で結果を出せていないのは気がかりながら、残留に向けて着実に前進していると言える。
柏に次ぐのは、11ポイントを上積みした横浜FC(20位)だ。中断前までにわずか2勝しか挙げられなかったチームは、今夏の積極補強で好転のきっかけを見出した。第27節からの3連敗で再び窮地に追い込まれたが、その後に横浜FMに引き分け、第31節では鹿島アントラーズを撃破するなど、残留への希望をつないでいる。
9ポイントの清水(15位)と徳島(16位)がそれに続き、大分(18位)は8ポイント、G大阪(14位)は7ポイントにとどまった。さらに苦しいのは湘南(17位)と仙台(19位)で、両チームともに1勝3分5敗と9試合で6ポイントしか手にすることができなかった。
浮上の兆しを見せるチームもあれば、さらなる苦境に陥ったチームもある。その状態の差が、残り試合に色濃く反映される可能性は高い。
ふたつ目のポイントは、残り試合の対戦カードだ。
カギを握るのは、残留争いの当事者同士の直接対決。そして、上位陣との対戦だ。直接対決はまさに生死をかけたサバイバルマッチとなり、苦戦が予想される上位チームとの対戦も、できることなら避けたいところ。このふたつの試合の数が多いチームは、過酷な終盤戦となるだろう。
なお、ここで言う上位陣とは、優勝争いとACL出場権(プレーオフ出場を含めればリーグ戦3位以内)争いを演じるチームとした。現在3位のヴィッセル神戸の勝ち点は57。逆転可能なポイントが7であることを踏まえ、勝ち点51で7位のサガン鳥栖までを上位陣と定義する。
最も恵まれているのは清水だ。残留争いの直接対決は1試合のみで、上位陣との対戦も2試合と少ない。残り4試合はACL出場争いにも残留争いにも関わらない、いわゆる中位のチームとの対戦となる。
もちろん、プロである以上はどのチームも勝利を求めてくることに変わりはないものの、とりわけシーズン終盤は、何かが”かかっている”チームと”かかっていない”チームとではモチベーションに差が生じやすく、その温度差がパフォーマンスに反映されることは決して珍しいことではない。その意味で”かかっていない”チームとの対戦が多い清水にとって、ポジティブな材料と言えるだろう。
8チームのなかで最上位に位置する柏も、直接対決=2、上位対戦=2と比較的恵まれたスケジュールとなっている。一方、直接対決が最も多いのは大分で、7試合中5試合がサバイバルマッチとなる(上位対戦は1試合)。
もっともこの状況は、降格圏からの脱却を狙う大分にとってありがたいことかもしれない。いわゆる「シックス・ポインター」となるだけに、勝てば一気に立場を逆転できる可能性があるからだ。もちろんその逆もあり得るが、その機会が5度もあることは、自らの手で残留の道を切り開ける可能性が高まることになる。
湘南も直接対決を4試合残しており、徳島と横浜FCは3試合。仙台とG大阪は2試合となっている。G大阪に関して言えば、上位対戦が5試合あり、全7試合が対戦相手にも”何かがかかっている”試合となる。優勝あるいはACL出場を目指して士気の高い上位陣からいかに勝ち点を奪えるかが、G大阪残留のカギとなりそうだ。
そしてもうひとつ、残留争いのポイントに加えるならば、得点力になるだろう。
残留争いから抜け出すためには、勝ち点1ではなく、勝ち点3が求められる。そのために必要なのは、ゴールにほかならない。過去にも得点力不足に泣き、降格の憂き目にあったチームは枚挙にいとまがない。
ここまでの得点数を見ていくと、柏と清水が31で、8チームのなかでは最も多い。続いて湘南の30で、G大阪、徳島、横浜FCの3チームが25、続いて仙台の24となっている。最も少ないのは21得点の大分。直接対決が多いにもかかわらず、得点が奪えずに勝ちきれない……そんな状況が続いてしまうと、いよいよ危険水域に達してしまうかもしれない。
もちろん、残留争いのポイントはこれだけではない。監督の采配力や選手のコンディション、チームの一体感、あるいは運といった要素も加わってくる。ただし、先の見えないサバイバルレースは、おそらく最後の最後までもつれるだろう。今季の最終節は12月4日に開催される。果たして、8チームに待ち受ける運命は、いかに。