相模原の歴史的勝利に導くハイパフォーマンス。藤本淳吾はまだまだ走り続ける

「意外とああいうのって、入ったりするだって思って」

昇格組のSC相模原に待望の“J2初勝利”を呼び込む鮮やかな一撃だった。

3月21日にホームで迎えた4節・大宮アルディージャ戦。1-1で迎えた90+3分、タッチライン際でユーリからのパスを受けた藤本淳吾は、そのままペナルティエリアに侵入。巧みなステップで対応にきたDFの逆を取った瞬間、左足を一振り。放たれたボールは逆サイドのポストに当たってゴールに吸い込まれた。

シュートは狙いどおりだったという。

「良い具合に中に入れたので、打ってみようかなと。意外とああいうのって、入ったりするだって思って」

試合は前半に先制される展開だったが、同点弾を演出したのも藤本だった。この日はベンチスタートで、84分に途中出場。その4分後、右CKで質の高いキックを披露。相手が前に撥ね返せなかったボールはポストを叩き、そのこぼれ球を平松宗が押し込んだ。

アディショナルタイムを含めれば、わずか約10分のプレータイムで2得点に絡む活躍ぶり。チームは開幕からの3試合で2分1敗と白星がなかった。殊勲のレフティは「点も取れたし、勝ててよかった」と安堵した。

今年でプロ16年目の36歳。一時は引退の二文字が頭をよぎったこともあった。2019年7月、ガンバ大阪から京都サンガF.C.にレンタル移籍。シーズン終了後、いずれのクラブとも契約満了となる。その後、新天地を探したが、なかなか見つからなかった。

このまま辞めるか、でも、もう少し続けたい――そんな藤本に声をかけたのが、当時J3の相模原だった。昨年8月、地元神奈川のクラブの一員に。15試合に出場し、J2昇格に貢献した。

「やっていて、よかった」

今季の開幕直後、改めて今の心境について聞けば、藤本はそう応えた。「この歳になって、走力も伸びたし」と笑顔を見せる。現役として充実した日々を送っているのだろう。「40歳まで続けたい」と意欲を燃やす。

チームメイトには、藤本が目指すべき大先輩、41歳の稲本潤一がいる。大宮戦で今季初出場した稲本は、この試合の藤本の活躍について「しっかりベテランの力を出してくれましたね」と称えた。

勝点50でJ2残留。それが相模原の今季の目標だ。「誰もが、相模原が降格するんだろうなと思っているかもしれない」と藤本は想像する。だが、チームが一丸となって戦えれば「とんでもないことが起こせる」と言葉に力をこめる。

自慢の左足がもたらした大宮戦の勝利で、チームはまたひとつ一枚岩になったに違いない。

「年齢がいっている人が活躍して、下の世代の人らが刺激を受けてチームが向上していけばいい」と稲本は言う。

40歳まであと4年。藤本淳吾はまだまだ走り続ける。

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