【Jリーグ補強診断】J1全20クラブ、2021シーズンに向けて戦力拡充に成功したのは?
2月26日の2021シーズン明治安田生命J1リーグ開幕に向けて強化を続けてきた各クラブ。どのチームが戦力の増強に成功したのだろうか。「◎=期待」「◯=良い」「△=不安」のジャンルをクラブ別に分類して補強の視点から新シーズンを展望していく。
【◎=期待】
■清水エスパルス
新型コロナウイルス禍の影響だろうか。今季は動きこそあったとはいえ、大幅に戦力アップを果たしたと感じられるチームは少なかっが、そのなかで最も上積みに成功したのは清水だろう。日本代表の守護神も務める権田修一をポルティモネンセから獲得したのをはじめ、長年、大分の最終ラインを支えた鈴木義宜も獲得。チアゴ・サンタナ、ウィリアム・マテウスと外国籍選手の補強にも力を注いだ。
ほかにも中山克広、原輝綺、ディサロ燦シルヴァーノらを加え、各ポジションで戦力アップに成功。日本での実績のあるミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を招へいしたことも含め、チームは大幅に生まれ変わった印象だ。昨季は低迷した清水だが、今季は一躍台風の目となる可能性を秘めている。
■名古屋グランパス
名古屋の補強策もしたたかだった。昨季は堅い守りを実現した一方で、攻撃面に課題を残した。そこで柿谷曜一朗と齋藤学の元日本代表コンビを補強し、課題解消へ向けた一手を打っている。また中盤には長澤和輝、最終ラインには木本恭生と、実力者を獲得。さらに特大のポテンシャルを秘めた森下龍矢も鳥栖から迎え入れている。各エリアで激しいポジション争いが繰り広げられることは必至で、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)との両立に向けて十分な戦力は整った。
■ガンバ大阪
G大阪も名古屋と同様に攻撃力の向上がテーマだったが、昨季広島で15ゴールを挙げたレアンドロ・ペレイラを獲得し、鳥栖からチアゴ・アウベスも補った。日本での実績も豊富な2人の加入はもちろん、韓国代表の司令塔、チュ・セジョンも補強。一方で主力の流出がなかったことを踏まえれば、間違いなく戦力は昨季以上だろう。富士ゼロックススーパーカップでもその一端を示したように、攻撃力のアップに期待が持てる。
【〇=良い】
■北海道コンサドーレ札幌
札幌は昨季の主力がベースとなる。そこに青木亮太、岡村大八ら新戦力が、どこまでレギュラー争いに迫れるか。ベールに包まれたオケチュク・ガブリエルのブレイクも期待されるポイントだ。2年ぶりに復帰した小野伸二の存在も、チームに良い影響を与えてくれるだろう。
■ベガルタ仙台
昨季低迷した仙台は、昨季の得点源だった長沢駿の移籍による得点力不足が懸念される。マルティネス、氣田亮真の獲得によりサイドアタッカーは充実したが、最前線は皆川佑介とエマヌエル・オッティの獲得に留まった。CSKAモスクワへの復帰が見込まれた西村拓真を完全移籍で獲得して頭数を揃えたが、戦力的には現状維持といったところか。
■鹿島アントラーズ
昨季は積極補強を敢行した鹿島だが、今季は静かなオフを過ごした。補強はルーキーと外国籍選手のみ。アルトゥール・カイキとディエゴ・ピトゥカの2人のブラジル人が、昨季からのプラス材料だ。一方で奈良竜樹、山本脩斗が抜けた最終ラインの選手層にはやや不安を残す。ルーキーの常本佳吾を含め、若手の台頭が求められるだろう。
■川崎フロンターレ
大黒柱だった中村憲剛氏が引退し、アンカーとした輝きを放った守田英正も海外へ移籍した川崎Fだが、名古屋からジョアン・シミッチを獲得し、小塚和季と塚川孝輝という計算の立つ戦力も補強。昨季、レンタル先の福岡でブレイクした遠野大弥の復帰も、小さくない上積みとなる。シミッチが富士ゼロックススーパーカップで早速機能していたことを考えれば、今季も王者に大きな死角は見当たらない。
■FC東京
FC東京は、昨季ブレイクの兆しを見せた原大智の移籍がややマイナス材料だが、それを除けば不安な点は見当たらない。逆に青木拓矢と渡邊凌磨を獲得した中盤の選手層は増しており、最終ラインにも元ブラジル代表のブルーノ・ウヴィニを獲得。既存の戦力をベースに新戦力を組み込みながら、悲願の初優勝に向けて準備を整えている。
■横浜F・マリノス
横浜FMは、昨季の得点源であるエリキの流出は痛手で、ジュニオール・サントスの引き留めも叶わなかった。得点力の低下が懸念されるなか、エウベル、レオ・セアラの新助っ人コンビの早期フィットが、王座奪還のカギとなる。一方で最終ラインに岩田智輝を獲得。CB、SBにも対応するこのユーティリティーの補強は、大きな上積みだ。
■横浜FC
J1での2年目のシーズンに臨む横浜FCは、斉藤光毅が海外へと旅立ち、一美和成と小林友希の2人が所属元へと復帰した。伸び盛りの若手の退団は痛手だが、渡邉千真、伊藤翔、小川慶治朗、高橋秀人ら経験豊富なタレントを補強。安定した戦いを実現し得る戦力を手にした。彼らが額面通りの働きを示せれば、残留という目標にも十分に手が届くのではないか。
■サンフレッチェ広島
昨季も補強が少なかった広島だが、今季もピンポイント補強に留まった。昨季のチーム得点王だったレアンドロ・ペレイラの移籍が痛手と思われたが、柏から期限付き移籍した先の横浜FMでブレイクを果たしたジュニオール・サントスをすぐさま補強。得点力は互角ながら、機動力、献身性の高さを踏まえれば、L・ペレイラ以上に活躍する可能性も秘めている。甲府から加入した今津佑太も最終ラインの競争力を高める存在として期待される。
■アビスパ福岡
昇格チームの福岡は、外国籍選手を積極補強し、残留を狙う。FWにはC大阪で実績を積んだブルーノ・メンデス、中盤にはベルギー出身のジョルディ・クルークスを迎え入れた。長谷部茂利監督のスタイルは確立されているだけに、彼ら新戦力の融合がカギとなる。最終ラインを支えた上島拓巳が所属元へ復帰するも、鹿島から奈良竜樹を補強し、ダメージを食い止めている。全体的な選手層の薄さは気がかりながら、残留を実現し得る戦力を整えた印象だ。
【△=不安】
■浦和レッズ
リカルド・ロドリゲス監督を迎えてリスタートを切る浦和は、新たなスタイルの構築に期待が持てる一方で、タレント力は低下した印象。青木拓矢、長澤和輝、エヴェルトン、マルティノスと昨季までの主力が移籍したのに加え、レオナルドが中国に移籍、さらにはキャンプ中の不祥事により柏木陽介の退団も決まっている。西大伍、田中達也、金子大毅ら他チームから主力級を補ったとはいえ、戦力的には心もとない。新スタイルの構築に時間がかかるようだと、よもやの低迷も起こり得るかもしれない。
■柏レイソル
オルンガの移籍により、得点力の低下は避けられそうもない。ドッジ、アンジェロッティと2人の外国籍選手に加え、椎橋慧也を加えた中盤の選手層は増した印象だが、FWの人材不足は否めない。オルンガ級のタレントなどそうそういるものではないが、得点を奪い切るエース級が不在のままでは、苦戦を強いられるかもしれない。
■湘南ベルマーレ
今オフで最もダメージを被ったのは湘南だろう。鈴木冬一と齊藤未月が海外移籍し、金子大毅、松田天馬、坂圭祐も他クラブへと移った。名古新太郎、山本脩斗らを補ったものの、湘南のサッカーを知る人材が少なくなり、方向転換は避けられそうもない。昨季18位と低迷したチームは、今季も苦しい戦いを強いられるかもしれない。
■セレッソ大阪
ロティーナ監督が退任したC大阪は、クラブのことを熟知するレヴィー・クルピ監督を再び起用し、攻撃的なチームへと舵を切る。もっとも昨季までの堅守を支えたマティ・ヨニッチの流出は大きな痛手。木本恭生の移籍も小さくないダメージだ。新加入のチアゴが実力未知数のなか、昨季まで神戸に在籍したダンクレーを緊急補強し、何とか駒をそろえた印象。原川力や大久保嘉人を加えたことで中盤から前線の選手層は増したが、守備面に不安を抱えたまま新シーズンに臨むことになりそうだ。
■ヴィッセル神戸
神戸は昨季に続いて静かなオフに。負傷でアンドレス・イニエスタが開幕に間に合わないと見られるなか、東京Vから加入した井上潮音にかかる期待は大きい。フラメンゴから加入したリンコンは、そのポテンシャルを考えれば大きな戦力となりそうだが、日本のサッカーにフィットできるかは不透明な部分も大きい。西大伍が抜けた最終ラインにも不安を残しており、ポジティブな材料はあまり見えてこない。
■徳島ヴォルティス
昇格した徳島は、昨季の主力がほぼ残留したものの、上積みは小さい印象だ。宮代大聖、藤田譲瑠チマとポテンシャルを秘めた若きタレントがどこまでフィットできるか。クリスティアン・バットッキオとカカの2人の新外国籍選手にもかかる期待が大きい。ただし、何よりの痛手はチームのスタイルを作り上げたリカルド・ロドリゲス監督の退任だろう。後任のダニエル・ポヤトス監督の手腕が未知数な状況において、不安は決して小さくない。
■サガン鳥栖
鳥栖は、原川力、原輝綺、森下龍矢ら主力が移籍し、戦力ダウンは否めない。新外国籍選手の実力も未知数で、加入した日本人選手もJ1での実績には乏しい。ポテンシャルを秘めた若手の成長に期待が集まる状況だ。
■大分トリニータ
大分も主力の流出のダメージを抱えたまま開幕に臨むことになりそうだ。なかでも鈴木義宜と岩田智輝が抜けた最終ラインには大きな不安を残す。長沢駿が加わったFWもコマ不足は否めず、田中達也が移籍した中盤も盤石とは言えない。6年目を迎えた片野坂知宏監督の手腕が、今季も残留のカギを握る。