G大阪、今季を占う初戦(2)同点後に“分断”したチーム
■2月20日/FUJI XEROX SUPER CUP 2021 川崎フロンターレ―ガンバ大阪(埼玉)
G大阪はこの試合で、4-3-3のシステムを披露した。昨季は序盤こそ3バックと4バックを併用したが、終盤は4-4-2で固定。粘り強い戦いで僅差をものにしてリーグ2位という好結果を得た。
4-3-3を導入したのは、リーグ2位のチームとしては寂しい得点力を改善するためのものだった。“好結果”と“優勝”の間にあるものを埋めるため、宮本恒靖監督はキャンプで新システムに挑戦した。この4-3-3は因縁の相手である川崎フロンターレと同じシステムでもある。リーグ優勝と天皇杯優勝という“2つの優勝”を目の前で見せつけられた相手のシステムに、トライしたのだ。
小野瀬康介を右サイドバック、矢島慎也を右ウイング、川修平を左ウイングに配置したガンバの4-3-3は前半、ブルーのユニフォームに飲み込まれた。試合開始直後からチャンスを作られ続け、29分、32分と立て続けに川崎MF三笘薫に得点を決められてしまう。
1失点目は左サイドを崩され、2失点目は右サイドからのボールをゴール前に詰めていた三笘に決められたものだが、それ以外にも、DF谷口彰悟やFWレアンドロ・ダミアンなど川崎に何度も決定機を与えているから、失点場面だけをことさら取り上げても仕方ないかもしれない。とはいえ、劣勢にあっても、時にサイドを深くついて得点を狙う姿も見せた。
後半に入ると、2得点を奪う。1点目は矢島がゴール前で落ち着きと技術を見せつけたシュートで、2点目はややラッキーな形で得たPKによるものだ。昨季、川崎と3度戦って得点を奪うことができなかったガンバにとって、実に大きなゴールだった。
ちなみに、2020年は3試合戦って0得点7失点。8月1日に0-1で負けたJ1第8節はガンバの4連勝を止められた黒星で、11月25日のJ1第29節は1位・2位対決ながら0-5と大敗したうえ、目の前でリーグ優勝を決められた。そして今年1月1日の天皇杯決勝では、2冠目を眼前で見せつけられた(0-1)。
2020年シーズンの雪辱を果たす準備は、2-2に追いついた埼玉スタジアムのピッチで整ったかに思われた。しかも、同点にした直後の69分に、FW・チアゴ・アウベスとFWレアンドロ・ペレイラを2枚同時に投入し、そのパワーを見せつけ、流れを引き寄せたように思われた。
先発出場したパトリックも合わせて、強力な外国人ストライカーが前線に3枚並ぶ姿は、圧巻だった。ところが、徐々に強力な攻撃陣とそれ以外の選手とで分断が生まれてしまう。それは、攻撃を構築するためのボールの流れを、自ら放棄することでもあった。
分断されたガンバを横目に、川崎がボールを再び握り始める。その流れの中で、後半ロスタイムの小林悠の劇的な決勝ゴールが生まれたのだ。“勝利”がよぎっただけにガンバとしては悔しい結末となってしまった。
とはいえ、悲観する必要はない。昨年と違ってボールを保持しようとする時間帯を見せることができたし、実際に得点を奪うこともできた。川崎は4-3-3にトライしてすでに1年間が経過しており、成熟という点ではどうしても川崎に分がある。記録ずくめの王者との立場を覆すには、2か月という期間はあまりにも短い。
さらに、新加入選手はチームに合流してまだ時間が浅く、今後、戦術やイメージを共有していけば、攻守でさらなる厚みを得ることができる。また、昨季の主力に定着した山本悠樹は、川崎を相手にフリーでボールを受けてはボールをちらし、ためを作るなど、ボランチとしてハイレベルなプレーを見せた。試合を重ねるとともに、選手のクオリティが今後さらに高まる期待感がある。
「もっともっと質を上げていきたい、上げていかなきゃいけない」 試合後に宮本監督が話したこの言葉がすべてだ。新しいガンバ大阪に生まれ変わるうえで、この敗戦は大きな糧になる。
ガンバ大阪のリーグ初戦は、2月27日(土)に行われる神戸戦。1週間分のアップデートがされた青黒のチームが、ピッチの上で暴れるはずだ。