「点を奪いながら与えない」…G大阪に求められるACL4強へのミッション SOCCER KING 9月16日(水)12時31分配信

Kリーグ王者の本拠地に乗り込んだファーストレグはガンバ大阪にとって、大きな安堵感とほんの少しの失望を感じさせるものだった。

大黒柱の言葉は率直だ。「良くもないけど、悪くもない結果。出来ればアウェイゴールを奪いたかったけど、上手く耐えながらやっていた」(遠藤保仁)。第 1戦ではG大阪を3倍上回るシュート15本を放った全北現代に序盤と終盤は劣勢を強いられながらも、今野泰幸を出場停止で欠くチームは見事に耐えきった。 Kリーグ勢ならではの激しいフィジカルコンタクトを繰り出してくる韓国の雄に対して、一歩も引かず、ピッチの随所で激しいバトルを展開。エース・宇佐美貴 史が徹底したマンマークに苦しんだこともあり、攻撃面では沈黙し、アウェイゴールを奪いきれなかった。

優勝した2008年大会以来となるベスト4を勝ち取る上でチームに課せられた選択肢は一つ。いかなるスコアであろうと“勝ちきる”ということだ。アウェ イゴールを与えなかった全北現代が1点以上の引き分けでも勝ち上がりが決まる一方で、G大阪には引き分け狙いのプランはない。

「明日は勝たなければ、というか、勝てば次のラウンドに行ける。勝利だけを信じて選手とともに戦いたい」。15日の前日会見で長谷川健太監督は、改めて必勝を誓った。

ただ、チームは大一番をエース不在で戦うことになる。守備の要、今野を欠いたファーストレグは百戦錬磨のチーム最年長、明神智和の奮闘で乗り切ったガン バ大阪だが、セカンドレグは宇佐美が出場停止。宇佐美不在の攻撃陣が、勝利をつかむ上で不可欠なゴールをいかにもぎ取るかがポイントになる。

「今時、珍しい便所マークだったね」とポジションの概念を捨ててまで宇佐美に密着する相手のマンマークをトイレにまでついていきかねない手法に例え、振り 返った長谷川監督だが、セカンドレグでももう一人のFWの軸、パトリックには韓国代表のキム・ヒョンイルが徹底マークすることは予想済み。勝利のポイント を問われた長谷川監督が「気持ち」、敵将のチェ・ガンヒ監督が「メンタル面」と似た答えを返したが、G大阪の指揮官は同時にこうも言う。「二つ目はガンバ のサッカーが明日出来るかどうか。そこに尽きる」。

かつてはパスワークを主体としたポゼッションサッカーを表看板とした大阪の雄ではあるが、現在の持ち味はファーストレグでも垣間見せた球際の強さと攻守 の切り替えだ。ただ、絶対的エースを欠くセカンドレグで、指揮官は全北現代の速く、そして激しいプレスを「原点回帰」で乗り切りたい考えだ。

原点回帰とはパスサッカー。ボールが走るホーム、万博記念競技場の芝の良さに慣れ親しんでいる選手たちは、マンマーク気味で対応してくる全北現代のゴー ルをこじ開ける筋道をすでに、頭の中に描いている。「一人でドリブルで攻めるよりは、パスでリズム良く回せれば相手はついてこられないと思う」(倉田 秋)。「相手はマンツーマン気味に来るだろうが、人よりもボールの方が早く走る。しっかりとボールを動かして崩しの形を作れれば、相手もマンツーマンだろ うと来られなくなると思う」(丹羽大輝)。

そんな指揮官の狙いは2列目の起用に現れるはずだ。宇佐美不在に加えて、大森晃太郎が負傷中。代役の選択肢は決して多くないが、奇しくも宇佐美ら代表組 を欠いて挑んだヤマザキナビスコカップの準々決勝、名古屋グランパス戦は、格好のシミュレーションの場でもあった。ここで存在感を見せたのが8月以降、復 調著しい二川孝広だ。名古屋とのファーストレグでは得点も決め、守備のタスクもしっかりとこなした背番号10について長谷川監督は「トラップがピタリと来 るようになった。名古屋の寄せが甘かったから、二川が良かった訳じゃない」とそのパフォーマンスを称賛。以前から、宇佐美不在時の切り札として想定してい た天才パサーを全北現代戦で投入する可能性が高まっている。

「出来る限りワンタッチプレーを増やしながらやれば崩せるチャンスはある」(遠藤)。G大阪の全盛期を支えた遠藤と二川がピッチで共存すれば、自ずとパスワークのテンポは上がるはずだ。

日本勢最後の砦となった大一番で、G大阪に課せられるのはゴールをこじ開ける作業に加えて、自陣ゴール前に鍵をかけること。ファーストレグは無失点でし のいだもののエース、イ・ドングを中心にパワフルな攻撃を仕掛けてくる相手アタッカーを封じるかもポイントだ。ファーストレグでは左サイドのブラジル人ア タッカー、レオナルドに対して丹羽大輝をマッチアップさせたが、直近のKリーグなどのスカウティングで左サイドにはイ・グノの先発が予想されている。鹿島 アントラーズ戦で不安定な守備を見せた右SB米倉恒貴に代わって、オ・ジェソクの先発が濃厚だ。

試合前日の非公開練習後、居残り練習で直接FKを何本も蹴り込み、大一番への闘志を静かに燃やす遠藤は、勝利のポイントを端的に言い切った。「非常にシンプルだけど、たくさんのチャンスを作り,チャンスを与えないことだと思っている」

点を奪いながら、点を与えないこと……。韓国の雄を相手に決して簡単ではないミッションをこなしきった時、G大阪は広州恒大と対戦する資格を得ることになる。

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