G大阪守護神、自身の“ベストセーブ”を選出 思考と動きが一致「パッと起こりそうなことが…」
【東口順昭インタビュー|第1回】自身のベストプレーに三冠の“起因”セーブ選出 「パッと切り替えられて…」
ゴール前に立ちはだかるその存在は大きく、何よりも頼もしい。今季序盤戦で好調なガンバ大阪の絶対的守護神・東口順昭が、オンラインで「Football ZONE web」のインタビューに応じた。プロ12年目の34歳GKは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、約4カ月の中断を強いられたなかでも好パフォーマンスを維持し、G大阪の最後の砦として守備陣を牽引している。J1リーグ第7節ヴィッセル神戸戦(2-0)でビッグセーブを連発するなどした東口に、これまでの“ベストセーブ”や取り組んでいる”改革”、衝撃的だったFWなどを聞いた。第1回は「自身のベストセーブ」について振り返る。
G大阪ジュニアユース出身で、ボタフォゴMF本田圭佑や川崎フロンターレMF家長昭博らと同期だった東口。ジュニアユース時代は身長も低く、ユースに昇格できなかったため、京都府洛南高校に進学した。その後、福井工業大学から新潟経営大学に転入し、2009年にアルビレックス新潟でプロキャリアをスタート。プロ2年目には主力に抜擢されるも、11年には右ひざ前十字靭帯損傷、12年には右ひざ十字靭帯再断裂と内側側副靭帯損傷という大怪我で長期離脱を強いられた。それでも抜群の安定感を誇り、14年に“古巣”G大阪へ移籍。移籍1年目から高いパフォーマンスを見せ、J1昇格初年度の三冠獲得に貢献した。日本代表にもコンスタントに選出され、18年のロシア・ワールドカップ(W杯)メンバーに選出された。
シュートへの反応、セービング力、ポジショニングの良さはJ屈指。守備範囲の広さも東口の特長の一つだ。そんなG大阪守護神が自身の”ベストセーブ”と話すのが、2014年の第28節川崎フロンターレ戦(1-0)で1点リードする後半35分にFW小林悠から受けたシュートを止めたシーンだ。左サイドをMFレナトが駆け上がり、そのクロスをゴール前にいた小林がダイレクトで合わせる。完璧なシュートで失点したかと思われたが、飛びついた東口が左手で抑えるビッグセーブを見せた。
「レナト選手がボールを持ってドリブルしたあたりから、シュートと中に低いボールが来ることを予想できた。中に折り返した瞬間、小林悠選手の位置も把握できていたし、あとはもう一つ、小林悠選手のニアにボールが来るかもという予測も頭に入れてステップをしていた。そこ(ニアサイド)を通過して小林悠選手にボールが行った時のステップワークと、ダイレクト(シュート)への準備がスムーズにできていた。(ニアを通過した時に)『次はシュートや』というところでパッと切り替えられて、ステップを変えた。一つひとつの作業が結果的に良かった」
二つ目に挙げたのは昨年の大阪ダービーで見せた”魂”のセーブ 「体を投げ出した」
当時、G大阪はシーズンも終盤に差しかかり、首位浦和レッズを勝ち点7差で追いかける2位。長谷川健太監督(FC東京)が率い、J2から昇格した初年度で、W杯による中断明け以降は劇的な勝利を重ねて順位を上げていた。それでも、首位浦和に離されないためにも勝ち点3は必須。そのなかで迎えた川崎戦で白星を掴み取り、この節にベガルタ仙台に敗れた浦和と勝ち点を4差まで縮めることができた。後に三冠を達成するが、優勝にはこのワンシーンは重要だったことが分かる。
「でも、結局小林選手がどういうシュートを打つかは分からへんから、そこは反応でどうにかできるか。そういうところまで持っていけるかが大事。あの時は、そこまで体勢を崩さずに反応できるような準備に持っていけたシーンかな」
さらにもう一つ、絶対に負けられないセレッソ大阪とのダービーでの”神セーブ”を挙げた。昨年のホームで行われた第12節の大阪ダービー(1-0)で前半10分に1対1を止めた。右サイド、自陣の深いところからロングボール1本で抜け出したC大阪FW高木俊幸と1対1となるも、相手についていってコースを切り、体でセーブ。こぼれ球もしっかりキャッチして絶体絶命のピンチを救った。
「相手がロングボールを蹴った時から、裏に走ったのが分かっていたので、『ついてこいよ』と思いながらもついてなかったのが分かった。裏抜けしたボールに対して一発で自分が出られたら良かったんですけど、それは相手のほうが近かったので出られず。ペナルティーエリア内で勝負しようと思って、エリア内に入ってきた時に距離を詰めたら、抜いてくるやろなという予測があったので、ついて行って、最後はコースがほとんどなかったので、体を投げ出した」
この二つは、東口が思う好セーブの“条件”をきちんと満たしていた。まず、論理立てて良いポジションが取れること。ステップ、体の向きを完璧に、最後はボールにしっかりと反応できて止めるという”3カ条”。印象深い二つのセーブは、思考と動きが一致した。GKは普段から一瞬の判断が求められるポジション。その瞬間に東口は何を思っているのだろうか。
脳裏に浮かぶ数枚の“写真” 経験と情報量を駆使して一瞬で判断「感覚を掴んでいく」
「考えているわけではなくて、パッと起こりそうなことが写真みたいにポンポンポンと何個か出てくる。結果的に『この写真や』と選ぶような感じ。一瞬ではなかなか考えられないと思う。それは今までの経験の実績や情報で感覚を掴んでいく」
ポジショニングの良さと思い切りの良さ、守備範囲の広さを見せた二つのセーブを“ベストプレー”に挙げた東口。この二つを超えたと自身が認めるようなビッグセーブが今季見られるだろうか。守護神がG大阪ゴールに立ちはだかる瞬間にも注目したい。