播戸理事、同世代の遠藤を語る「いつの間にか遠藤のスタイルになっている」
サッカー界で「黄金世代」と呼ばれる同じ1979年度生まれで、ガンバ大阪や年代別の日本代表で共にプレーしたJリーグ特任理事の播戸竜二氏(40)に、4日夕の「大阪ダービー」でJ1最多出場記録の更新を目指す遠藤保仁(40)のすごさを聞いた。
今季の開幕戦で楢崎(正剛)さん(の631試合出場)に並び、中断となって約4カ月。若い選手でも状態を保つのは難しいと思うが、40歳の体でどうなのか。どう中断期間を過ごし、どう監督にアピールし、どう試合に出られる体をつくり上げているのかに興味がある。
彼のすごさは僕や他の選手と比べ、圧倒的にけがが少ない点。けがをしないプレーをするにはどうしたらいいのか考え、いろんなアプローチをしている。なおかつ、本当にミスが少ない。ボランチ(守備的MF)のポジションだからというのもあるが、自分が思ったところにボールを止めることができ、相手にあまり接触も受けず、味方にパスを出す。ちょっとミスをすると余分なところに力が入ったり、余分なプレーが増えたりするもの。それがないので、体のロスが少ない。いろんな意味で、それが長くプレーできている要因だと思う。「止めて蹴る」というベースが圧倒的に高い。なおかつプレーに対する判断もいい。
年齢を重ねるにしたがって、もちろん体力は落ちてくるが、補って余りあるプレーの正確さであったり、判断の良さであったり…。あとはゲームのコントロール。彼は存在自体がチームにプラスになる選手。派手な選手ではないし、目立ったことをするわけでもない。しかし、彼がいると試合の主導権を握り、全体の流れがスムーズになる。自分本位じゃなく、チームにとって何が一番いいかを常に考える。仲間にとって、これほど心強い選手もいない。
長くプレーを続け、一緒に戦う選手や監督が変わっていく中、彼が従わせようとしているわけではなく、そういうそぶりも一切見せないのに、いつの間にか遠藤のサッカー、遠藤のスタイルになっている。監督も自身がやりたいサッカー、スタイルがあると思うが、気づいたら遠藤を中心にしたサッカーになっていたという感じ。チーム内の自分の立ち位置であったり、プレーの選択肢であったり、そういうものを練習を通じて毎日判断している。プレーだけでなく、いろんなことに適応する頭の思考法もたけていると感じる。
起伏がないように見えて負けず嫌いな性格。表に出さないだけで貪欲さも常に持っている。同世代の中では、天才と言われた小野伸二(FC琉球)のスター性や小笠原満男(元鹿島アントラーズ)のキャプテンシーのようなものはない。自分が主役になることはないし、偉そぶるわけでもないが、いつもそこにいた、という感じ。彼のボランチというポジションそのまま。ただ、自分が頑張って同世代に刺激を与えたいという思いはいつも持っている。彼には誰も到達できないところまで数字を伸ばしてほしい。そして、若手はそこを目指してほしい。彼が選手として頑張るのなら、やめた僕たちは彼より先に第2の人生をスタートしているわけだから、彼が届かないところまでやっていくぞという気持ちがある。同世代で、互いに刺激し合っていきたい。