ガンバ遠藤新記録なるか「いい準備」アップデートし、進化続ける
新型コロナウイルスの影響で中断していたサッカーのJ1が4日夕、リモートマッチ(無観客試合)で約4カ月半ぶりに再開する。当面は感染リスクを避けるため、所属する18チームを東西の2地域に分け、本拠の近いチーム同士の対戦カードが組まれている。関西勢は、ガンバ大阪とセレッソ大阪が「大阪ダービー」を戦う。会場はガンバ大阪のホーム、パナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)。
ガンバ大阪の元日本代表MF、遠藤保仁(40)にとって再開初戦は、メモリアルな試合となる。ピッチに立てば、名古屋グランパスエイトを中心に活躍した元日本代表GK、楢崎正剛氏(44)と並んでいた631試合のJ1最多出場記録を更新するからだ。J1の試合数は年間34試合、登録選手の平均年齢は25・81歳。20~30代でユニホームを脱ぐ選手が多い中、20年以上もプロの第一線で活躍できる理由は「いい準備」に尽きる。
6月30日の練習後、オンラインで取材に応じた遠藤は予想通りの言葉を口にした。「まずはいい準備をしながら、いいコンディションを保ち、チームに貢献できればいい」-。
いつも飄々(ひょうひょう)。喜怒哀楽を表に出すことは、めったにない。お決まりのコメントは「いい準備」。そのつかみどころのなさが、遠藤の魅力のひとつでもある。
3人兄弟の末っ子で、兄2人の後を追ってサッカーにのめり込み、おっとりと育った。ただ、名門の鹿児島実高から入団した横浜フリューゲルスが1年で消滅するなど、歩んできた道は平坦(へいたん)ではない。それでも、卓越した戦術眼や正確なパスを武器に出場を続けた。
「普段通りに試合に臨めばいい」という安易な意識が変わったのは、メンバーに選ばれながら出場機会がなかった2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会後。2度目のW杯となった10年南アフリカ大会前のインタビューで「4年前は、自分の中でやるべきことがはっきりせず、漠然と日々を過ごしていた。今は全然違う」と口にした。試合に向け、さまざまなことを想定して周到に用意し、故障しないよう体もケアする。そういうプロセスを大切にするようになった。
それから10年。ガンバ大阪の主力であり続けた。「試合に出てコンディションが落ちるのを避けてきた。スタッフや仲間にも恵まれた」というのが自己分析だが、ガンバ大阪や日本代表で共にプレーし、今は指揮官として起用する立場の宮本恒靖監督(43)は「どの監督のサッカーにも適応できる。求められるプレーを理解する反応が早い」と話す。後輩の宇佐美貴史(28)は「ヤット(遠藤の愛称)さんはずっとすごいが、今がヒシヒシと感じる」と言った。
「いい準備」の中身については多くを語らない遠藤だが、年齢に応じてアップデートしてきた。それが、「不惑」となっても試合出場を続けられる理由に違いない。