遠藤保仁、“無観客”大阪ダービーでJ1最多632試合出場へ 「鉄人」であり続ける理由とは?
【インタビュー】開幕戦でJ1最多タイの通算631試合出場を達成した“鉄人”が新記録達成へ
いよいよ4日、J1リーグが再開する。ガンバ大阪はいきなりホームでセレッソ大阪とのダービーを戦う。この一戦でMF遠藤保仁が出場すれば、J1最多の通算632試合出場という前人未到の記録を達成する。2月23日の横浜F・マリノスとの開幕戦(2-1)で、2018年限りで現役を引退した元日本代表GK楢﨑正剛(名古屋グランパス)の記録に並んだが、歴史を塗り替えるという直前、新型コロナウイルスの影響によりリーグが中断。約4カ月半のイレギュラーな時期を過ごして、”再王手”となった。記録について合同インタビューに応じていた遠藤は、「鉄人」であり続ける理由を語った。
背番号7の姿が開幕のピッチでも輝いた。プロ23年目を迎えた遠藤は、横浜FM戦に先発出場。J1最多タイとなる通算631試合出場だけでなく、自身が持つ最多の21年連続開幕スタメンの記録も更新した。1998年に鹿児島実業高校から横浜フリューゲルスに加入。この日と同じスタジアム(当時は横浜国際総合競技場)で高卒1年目から開幕スタメンに名を連ね、開幕戦で先発を外れたのは京都パープルサンガ(当時)に所属していた99年のみ。13年のJ2時代を含めて21年連続でスタメンを務めた。さらに、プロ1年目から23年連続での開幕戦出場。横浜F時代の先輩である楢﨑に並ぶJ1最多タイとなる通算631試合出場という記録ずくめの一戦とし、9年ぶりの開幕戦勝利を飾った。
18歳でデビューし、今年で40歳。そんな節目の年にまさかの事態に陥った。新型コロナウイルスの影響により、リーグは中断。次節にも記録達成を控えていた遠藤だったが、思わぬ壁によって記録更新は“お預け”となった。
約4カ月半前、2020年のJリーグ開幕戦で遠藤は開幕のピッチに立った。若手の台頭もありながら、チーム内での競争を勝ち抜き、ポジションを掴み取った。これはJ1の631試合、公式戦にすれば1000試合に出場した遠藤にとって毎回同じこと。時の流れに従って、日々のトレーニング方法を変化させながら、1試合1試合を積み重ねてきた。
「基本的には目の前の試合に出たいというのが大前提になってくるので、若手と同じようなことをしても体が壊れる可能性もありますし、逆にセーブしすぎて、本来やっていかなければいけないことをやっていなければ、落ちていくだけなのでその辺は難しい立ち位置ですけど、でも、元気なうちは若手と競争し合いながら、日々のトレーニングやっていれば問題ないと思うので、それプラス自分の体と向き合ってという感じで続けていければ」
“鉄人”遠藤のコンディション調整法 年齢を重ね変化「状況に応じて移行してきた」
試合出場へのこだわりを強く持ち続け、2月23日にはJ1最多タイの631試合へと到達。昨年8月2日、第21節ヴィッセル神戸戦では遠藤自身が「ものすごく価値がある」という公式戦1000試合出場を達成した。
「年間単純計算で40何試合やっていないと到達できない記録なので、リーグ戦だけじゃなく、代表、カップ戦をこなしながらリーグ戦も出場しなきゃいけないので、1年間トータルのコンディション作りというのは必要不可欠になってくる。そう考えると、リーグ戦の記録もものすごく価値があると思いますけど1000試合のほうが価値ある」
そもそも大怪我はほとんどない。1年間戦える体を作ることは年齢を問わず難しいとされるも、自身に問いながら年々トレーニングを変化させている。40歳となり、身体的な衰えを感じないと言えば嘘になる。特に視覚については視力1.2というものの、「年を重ねるごとに視野も狭くなる傾向にある。ゲーム中、常に周りを確認してというのは昔より増えた」と本人も実感。それでも、1000試合以上戦い続けている体でやはり大きな怪我はない。
「今はスムーズに体を動かすのがメインになっている。鍛えるというよりは、年齢を重ねるごとに一歩出ないとか反応が遅れてしまうとかがないようにということが、メインになっていますけどね。いろんな観点からあると思いますけど、基本的には柔軟性をより良くしたり、柔軟性を保ちながら力を入れる運動とか、そういうのがメインになってくると思います。ヨガとかもやったりしています。動きながら、というのが多いので、動きを取り入れた中でのスムーズさをメインにしていますね」
ここ数年は、柔軟性を重視。オフの日には後輩を誘ってヨガ教室へ通うこともある。試合後には、1人でひっそり温水・冷水・炭酸水が揃うクラブハウスへ戻って疲労が蓄積しないよう人一倍ケアに気を遣うこともある。オフ期間に自主トレをするようになったり、自身のコンディションを知り尽くしている。
「意識はずっと前からしていますけど、鍛える部分から柔軟性に移行してきたのはここ数年。今に始まったことではないですけど、その時その時で、もう重たい物をがんがん上げるという年齢でもない。状況に応じて移行してきた」
“無観客”の大阪ダービーでJ1通算632試合出場へ 「変化はつけたい」
遠藤保仁という唯一無二の存在。1年間戦える体で試合に臨むのは、やはり勝利のため。ピッチに立てば、今でも私たちを驚くようなパスでワクワクさせてくれる。遠藤自身は武器である“パス”について、どのように考えているのか。
「自分のパスというよりは、チームとして完璧に動かせたというほうが好み。1本のパスなら出し手と受け手の関係だけになってしまうので、30本も40本もパスを繋いでゴールしたというほうが僕は好き。一番いいのは2個3個先のプレーを誘導するパスができればいいかな。第一歩として。もちろん味方の選手と違う時もありますけど、『2個3個先にこうなるからこのパスを出した』というようなパスが増えたら嬉しい」
記録更新がかかる一戦は、遠藤が何度も戦ってきた大阪ダービー。通常なら超満員で埋め尽くされ、熱気に包まれるスタンドにサポーターの姿はない。それでも、遠藤の思いはいつも変わらない。
「途中から入っても、最初から出ても何かしら変化はつけたい。チームが上手くいっていない状況からいい状況に持って行くのは面白いところの一つでもあるので、そういう時に体が勝手に動くのは一番いいと思いますけど、頭でしっかり考えてという試合が増えていけばいい。頭で考えてプレーするということは、誰にも負けない」
鉄人が歩む前人未到の道――。歴史にも記憶にも残るかつてない大阪ダービーで、遠藤が大記録を打ち立てる。