宮本ガンバの新機軸『トランスフォーム』の強み【J再開後の見所2】

再開後のJリーグで注目すべきチームやポイントなど、見所を紹介していく連載の第2回。今週末に再開するJ1のガンバ大阪を取り上げる。宮本恒靖監督の狙いと選手に能力の高さで開幕戦では王者マリノスを撃破した。今季のガンバは一味も二味も違うーー。

形のカギはウイングバック
宮本ガンバの新機軸が興味深い。

今季の開幕戦で演じたTransformation<トランスフォーメーション>だ。布陣を巧みに変形させながら攻守の利得を引き出す試みと言ってもいい。これが見事にハマり、J1王者の横浜F・マリノスを仕留めてみせた。

初期配置はバックスの手前にピボットを据えた3-1-4-2。昨年5月の大阪ダービー(12節)で実装し、チームのベースとなった布陣だが、これを攻守に変形させる新手を打ったわけだ。

妙味は二段構えの守備隊形にあった。敵陣では4-1-2-3に近い位置取りでハイプレスを試み、ミドルゾーンから後方では5-4-1にシフトして厚い防壁を築く。戦況に応じて、細やかに、速やかに配置を動かし、敵の攻め手を封じ込んだ。

変形のカギはウイングバックにある。

4-1-2-3の場合は右の小野瀬康介が最前線まで上がり、左の藤春廣輝が最後尾に下がる。そして、2トップの一角を担う倉田秋が左に開いて小野瀬と両翼を担った。5-4-1の場合は藤春に続いて小野瀬も最後尾まで下がり、倉田が中盤に落ちて、宇佐美貴史の1トップという形。あえて最重要キャストを挙げれば、縦の3つのポジションを独りで切り盛りする小野瀬か。

こうやれ――と言われたところで、おいそれと実践できるような類のものではない。設計図を描いたのは指揮官だが、優れた戦術眼と複数のポジション適性を備えた面子がそろうG大阪ならではの「変わり身」だろう。

攻守のフォーメーションを動かすやり方は昨今の流行だが、その多くは自分都合。攻守の型がそれぞれ決まっている。G大阪のそれは対応型だ。相手の布陣や戦い方を見極め、自在に形を変えていく。その点で一歩先を行くやり方だろう。

ただ、開幕戦で実践したトランスフォームには「対マリノス仕様」の含みが多分にあった。つまりは攻撃の局面で各々がめまぐるしく位置取りを変える先方のポジショナルプレーに対応するためだ。果たして、この先も変形の連続となるのかどうか。今季からポジショナルプレーの実装を企むJ1クラブが増えたことを考え含めると、同種の策を打つ試合は少なくないかもしれない。

いや、変わるべきはむしろ、相手の方か。

そもそも現在のG大阪はJ1でも指折りの攻撃力を誇る。ゲームの主導権を握る力が強い。しかも、大御所の遠藤保仁がピボットに収まってからボールを動かす力が一段と高まった。昨季終盤における遠藤の立ち回りはまさに別格。たった1本のパスで劇的に局面を変える力は少しも錆びついていない。

懸案事項は連戦による人選変更
扇形に並ぶアタック陣の位置取りも追い風だ。ウイングバックの鼻先へ送る対角パス、ブロックの隙間へ通す縦パス、さらにライン裏へピタリと落とすタッチダウンパスが遠藤の右足から自在に繰り出され、チームの攻め手が格段に広がった。攻撃の要諦である「幅と深さ」をフル活用するのだから、守備側はたまったものではない。

仮に4-1-2-3へ配置を変えても、ほぼ同じ数のチャンネル(パス経路)を確保できる。そうなれば、マッチアップのズレを狙った対3バック仕様の変形(攻撃時の布陣)として選択肢に入れても面白いだろう。目論見どおりに事が運ばなくても、本来の3-1-4-2へ戻せば済む話。そこが同じ面子で自在に配置を動かせる強みだ。

懸案事項は布陣の変形よりも、未曾有の連戦に伴う人選の変更にある。とりわけ、40歳の大台に達した遠藤をどう使っていくか。再開初戦の大阪ダービーでJ1最多出場記録の更新を狙う鉄人だが、連戦中もフル稼働できるかどうかはさすがに未知数だろう。

温存する場合には開幕戦で攻守に出色の働きを演じた矢島慎也をピボットに回す算段か。そもそも3-1-4-2の新布陣をインストールした当初はこの人が中盤の深い位置に構え、攻撃のタクトを振るっていた。矢島が先発ならば、状態次第で遠藤を勝負どころの切り札に使える。それはそれで魅力的な戦術プランだろう。

気がかりと言えば、小野瀬と藤春の使い方だ。どちらも破格の走力と運動量を誇るが、労働過多のポジションだけに酷使は禁物。そこでどうやりくりするか。右でも左でも使える福田湧矢の存在は大きいが、その実は攻撃型だ。藤春とは違い、サイドバックでは使いにくい。つまり、4バックへの変形は棚上げとなる。その意味で藤春の控えを補強したいところだが、どうなるか。

ともあれ、ベストの陣容で戦えば、変幻自在のトランスフォーメーションは機能する。戦術自体も押し引き自在で、ポゼッションもカウンターもしかと手の内にある。機に臨み、変に応ずる強みをもって、天下取りに名乗りを上げるはずだ。

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