【現場記者の目】武藤&宇佐美&柴崎のプラチナ世代。不発のカンボジア戦、各々に課された課題とは? フットボールチャンネル 9月5日(土)13時0分配信

勝ち点3を獲得したカンボジア戦。しかし、得点を奪っ たのは本田圭佑、吉田麻也、香川真司の3人だった。これからの日本代表を背負う存在として大きな期待をかけられている武藤嘉紀、宇佐美貴史、柴崎岳は結果 を残すことができなかった。アフガニスタン戦、その先に向けた彼らの課題とは?

決定機らしい決定機を作れなかった武藤

 3月のヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任以降、アジア勢相手に公式戦4戦勝ちなしという予期せぬ苦境に陥っていた日本代表。

3日の2018年ロシアW杯アジア2次予選・カンボジア戦(埼玉)は悪循環を払拭する意味で、非常に重要なゲームだった。勝ち点3はもちろんのこと、最低でもシンガポールがカンボジアから挙げた4点以上を取り、劇的な内容の改善を印象づけたかった。

しかし、結局のところ、奪った得点は本田圭佑(ミラン)のペナルティエリア外側からの強烈左足シュート、吉田麻也(サウサンプトン)の右足ミドル弾、そして岡崎慎司(レスター)のシュートのこぼれ球を拾った香川真司(ドルトムント)のラッキーゴールのみ。

34本シュートを放って3点というのが不完全燃焼感を色濃く感じさせるうえ、得点者が2014年ブラジルW杯経験者ばかりで、目新しさもなかった。

今季マインツへ移籍し、8月29日のハノーファー戦で1試合2ゴールを叩き出した武藤嘉紀は満を持して先発で2列目左に入ったが、酒井宏樹(ハノーファー)の右サイドからのクロスに速いタイミングで飛び出しすぎて自らチャンスをつぶしてしまった。

交代直前には指揮官から香川とのポジション交代を告げられ、岡崎と2トップ気味になったが決定機らしい決定機を迎えられずにベンチに退く後味の悪い結末となってしまった。

「アジアはかなり引いてくる相手が多いと思いますし、その中で先に入り過ぎて、速いタイミングで行き過ぎると、自分たちのスペースを消しちゃうことが分かった。

そこを修正していくことも大事だと思った。その入り方やタイミング、質をもっと上げていかないといけない。あとはやっぱり最後のところをしっかり決めき ることをしっかりとやらないといけないですね」と一夜明けて4日午前、埼玉県内でクールダウンを終えた武藤は改めて自分自身の問題点を客観的に分析してい た。

途中出場もアイデアにかけていた宇佐美

 武藤はマインツで初先発したボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦でも、タテへ直線的に急ぎすぎるあまり、オフサイドを5回も取られ、カウンターのチャンスでラストパスをもらえないというミスを犯した。

もちろんドイツ移籍直後の初先発の試合でそこまで完璧なパフォーマンスができるわけはないが、彼はその失敗を自分なりに学習したのだろう。だからこそ、 わずか1週間で直線的な飛び出しを改め、ウエーブを交えながら相手の視野から外れて前線に抜け出す形からゴールを奪えたのだ。

カンボジア戦でもそれと同じような相手をかく乱するような動きを織り交ぜつつ、緩急をつけながらタイミングをずらしていかないと、あれだけゴール前を ガッチリ固めた相手には厳しい。武藤は今回の悔しい経験を8日の次戦・アフガニスタン戦(テヘラン)に生かさなけれなならないはずだ。

武藤と同じ92年生まれのプラチナ世代の宇佐美貴史(G大阪)も、ジョーカー的に使われながらチームの攻撃リズムを変えられなかった。6月のシンガポール戦(埼玉)のように中へ中へ入っていく傾向が強く、どうしても仕掛けが単調になりがちだった。

それを本人も自覚している様子で、カンボジア戦の試合後には「1対1のシーンを少しでも抜かせられれば入ったとは思いますし、そういうところのちょっとした余裕なりアイデアが欠けているように思う」と反省の弁を口にしていた。

天性のリズムと得点感覚を誇る彼なら、もっと相手を見ながら裏を突いたり、ドリブルできりきり舞いしたりしながら、ゆとりを持ってゴールを狙っていけるはず。そういう精神的余裕がないのは武藤と一緒。

若さと代表経験のなさがそういうふうに仕向けてしまうのだろうが、そこを改善しなければ、岡崎のような日本代表の確固たる点取り屋にはなれない。彼もまたカンボジア戦を教訓にしなければならないはずだ。

出番なく、チャンスを与えられなかった柴崎

 そしてこの試合で出番のなかった柴崎岳(鹿島)も、膠着状態が続いたカンボジア戦の戦いぶりをベンチからしっかりと見守っていたという。

「自分が入ったらどういうプレーをするかという想定はしていました。決定機はありましたけど、3点ではまだまだだと思います。非常に特殊な形の予選だと思 いますし、すべてのチームがああいう守り方をしてくるんで、あそこまで引かれるのは珍しくて自分たちも戸惑っていた部分はあると思います」と彼は冷静に チームメートの動向を分析していた。

そういう仲間たちに精神的な落ち着きを与え、中盤でタメを作り、チャンスを伺いつつミドルを決めるというのが、柴崎に託される仕事だろう。

ハリルホジッチ監督は彼を攻撃的MFとして位置づけているため、ピッチに立つとすれば香川のトップ下か、あるいはボランチの長谷部誠(フランクフルト)が担っていた役割になるのではないか。

そういう中で柴崎はどんな状況でも自分のリズムで堂々とプレーできる若手の中では珍しい存在だ。そこは武藤も宇佐美もできなかった部分。彼が入ること で、同い年の2人も力づけられるのではないだろうか。そういう意味でも、次戦はどこかで柴崎にチャンスを与えてもらいたい。

今年23歳になるプラチナ世代トリオがチームに新風を起こすことは、今後の予選を考えても重要なテーマ。2次予選初のアウェイ戦となるアフガニスタン戦で彼ら可能性をぜひ見てみたい。

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