G大阪遠藤J再開の日に金字塔、06年奇跡乗り越え

ガンバ大阪の元日本代表MF遠藤保仁(40)の大記録が、制裁試合をのぞいてはJリーグ史上初の無観客試合で達成される。

新型コロナウイルスの影響で中断していたJ1が、7月4、5日に再開されることが決定。その初戦で大阪ダービーが組まれ、G大阪のホームで開かれる。

現在J1通算最多出場タイ記録を持つ遠藤が、あと1試合に出場すれば632試合になり、今季開幕で並んでいた楢崎正剛(元名古屋GK)を抜き去り、単独で歴代1位に躍り出る。その歴史的な舞台が「無観客」で「大阪ダービー」。後世に語り継がれる1日になりそうだ。

遠藤といえば鉄人のイメージそのものだが、06年にウイルス性肝炎で戦列を約2カ月も長期離脱したのは有名な話。本人も後日談として「あの経験は2度としたくない」と言うほど、深刻な状況だった。

当時26歳、日本代表で参加したアジア杯予選インド遠征中に体調を崩した。10月12日に帰国後、高熱で自宅近くの病院を受診したが原因が分からない。一向に容体が回復せず、同20日に今度は大きな総合病院に入院した。

総合病院では面会謝絶なのに、多くの仲間や関係者が見舞いに訪れるため、通常の病棟ではない、別の棟に事実上の隔離をされていたという。それほど状況は思わしくなかった。

食欲もなく、体重は減る一方。果物しか口にできなかった。さまざまな治療で39度の高熱を下げ、徐々に回復していったという。入院は2週間以上。逆に、約2カ月で試合に復帰できたのが奇跡的だった。

「当時、やれそうでやれないのではなく、やれなかった。あれだけ長い間休んだのは初めて。改めてサッカー好きだと思った。体を動かせるだけでも幸せと感じた」。遠藤は後日、こう語っている。

14年前にウイルス性肝炎という病魔に勝った遠藤は今回、日本全体で新型コロナウイルスを乗り越え、Jリーグ再出発の記念日に金字塔を打ち立てる。05年のJ1初優勝の際、同じピッチに立っていた宮本恒靖監督(43)は言う。

「現役時代から横で見ていて、今は監督として存在感を感じている。いろんなことを経験して吸収したから今がある。632試合以降も(記録を)伸ばしていくのは間違いない」

新記録達成で本来ならサポーターの拍手を浴び、花束を受け取ってスタンドに手を振る光景が思い浮かぶが、当面は無観客で、新型コロナ感染予防を最優先に華々しいセレモニーはできない。クラブ側は後日、観客が入った最初のホーム戦で式典を用意する意向だ。

遠藤は先日、J1再開が決まった際に「試合が再開できることを非常にうれしく思います。(新記録は)光栄だが、チームのためにプレーしたい。いいモチベーションで臨みたい」とのコメントを出した。どんな大記録がかかろうとも、勝利を目指して淡々とプレーをする。改めて“ヤット流”に魅了される1日になりそうだ。

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