頭脳明晰のG大阪宮本監督、解説は聞き応えたっぷり

ツネ様の解説は、聞き応えたっぷりだった。

16日のガンバ大阪公式ユーチューブチャンネルで、2005年J1リーグ最終節・川崎フロンターレ-G大阪(等々力)の試合を、宮本恒靖監督(43)ら当時出場していたOBが解説するという初の企画が生配信された。

J1初優勝を逆転で飾ったという伝説の試合。他会場で首位セレッソ大阪が後半終了間際の失点で痛恨ドローとなり、2位G大阪が勝ったことで逆転で優勝を引き寄せた。クールな西野監督まで男泣きし、DFで出場していた宮本監督も号泣。自身の映像を見て「泣きすぎやろ」とツッコミを入れて笑いを誘った。

自らが出場していた試合を解説するのは、どんな解説者にも勝つ。それが頭脳明晰(めいせき)、ツネ様の解説となれば、うなる場面が多くあった。いくつか挙げると-。

◆「ちょっと間(ま)があった。ああいうキックは(しばらく)見てなくて、大事にいったんかな」。後半34分に勝ち越しとなるPKを遠藤が決めた場面。コロコロPKではなく普通の速度で決める。緊張気味の遠藤の心理をうまく分析。

◆「没収試合になったら困るから、早く戻ってくれと思っていました」。後半終了間際にMFアラウージョのダメ押し弾で4-2に。ほぼ同時間帯にC大阪が同点に追いつかれた。逆転優勝を察知し始めたG大阪サポーターが狂喜し、グラウンド内になだれ込み、選手と抱き合って収拾がつかない状況に。それを見ていたDF宮本が、距離を置きながら願っていたそうだ。

◆「実は(右膝の)内側がひどい痛みで注射してやっていた。後半途中から効き目がきれてくるというので心配していた。自分は交代できない。何事もなく終われと思っていた。翌年も痛かったし(優勝の)代償やね」。先に主将DFシジクレイが負傷交代し、これ以上最終ラインの人間が退けない覚悟を思い起こす。「優勝の代償」とは、なかなかできない表現だ。

約2時間10分の生配信で感じたのは、ツネ様の抜群の記憶力。当時のシステムや背景をよく覚えており、仲間の心理をうまく表現できるから、番組の進行が実にスムーズ。穏やかな表情で語りかけられれば、サポーターもきっと至福の時間だったに違いない。

宮本監督は今季で就任3年目(18年途中から就任)。9位、7位と来て、今季は最低でも優勝争いがノルマで、タイトル獲得は誰もが望むところ。逆にこの2年近い在任で生まれた課題もあった。選手との距離感をどう埋めるかだった。

ある関係者が「宮本は、人間としてできすぎている。もっと自分を崩せばいい」と指摘したことがある。日本代表主将を務めるなど優等生イメージが定着したことで、選手も近づきにくいことがあったように思う。それが距離感として出たこともある。

今年1月の沖縄キャンプ時に、宮本監督は「監督とは、ストレスがたまる仕事でもある」「ふとした時も(監督業のことで)考え事をしてしまうことがある」などと、記者に打ち明けたことがあった。こういった“スキ”を選手に見せることも、距離を近づけるには時には大事なことだと思う。

今季開幕の横浜Fマリノス戦の大方の予想を覆す勝利は、大胆なシステム変更と選手起用が当たったもので、監督としては確かな手腕を示した。気の早い話だが今後次第では、26年W杯カナダ・メキシコ・米国共催大会の日本代表監督の可能性さえある。そのキーワードは、脱・完全無欠なのかもしれない。

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