家族、本田圭佑、日本代表……家長昭博の本心に迫った1年前の独占インタビュー“秘話”

家長昭博の独占インタビューが実現したのは去年の3月。川崎フロンターレの試合は何度も見ていたが、1対1でインタビューするのは初めてだった。

しかも周囲からは「本音を話さない」と、関係者から聞かされていたので、少し身構えていた。
といえども、どんなインタビューになるのか、かなり楽しみでもあったし、こちらとしてもいくつかのシチュエーションを想定して質問パターンもあれこれ用意していた。
ただ、そんな心配は無用なほど、約1時間の取材はとても楽しいものだった。
昨年4月に出したインタビュー記事の中で、家長は様々なことを話してくれた。

川崎フロンターレでの立ち位置、スペインのマジョルカと韓国の蔚山現代でプレーして得た“人生観”や“生き方”について――。

サッカーの話だが、サッカーの話ではない貴重な人生観をたくさん聞かせてもらった。

ただ、話の内容が濃かったため、分量が多く、泣く泣く削った部分もたくさんあった。あれから1年。

そこで今回は“独占インタビュー秘話”として、記事の中に入れられなかった話をお届けしたい。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、延期が続くJリーグだが、少しコロナネタから遠ざかってもらい、家長のまた違う一面を知ってもらえると幸いだ。

「圭佑はやっぱりすごい」
家長はガンバ大阪ジュニアユース、ユース出身。当時、ジュニアユースの同期には本田圭佑(ボタフォゴ)がいた。

中学生時代から地元では注目されていた二人だが、お互いに現役選手として、今も仲がいいことで知られている。

家長が18年にJリーグMVPを獲得したとき、本田はビデオメッセージを送ったほどだ。そこで本田の生き方について聞くと、こう答えるのだった。

「(様々なクラブでのプレーやビジネス展開について)面白いですよね。やっぱりすごいですよ。普通の人じゃできませんから。すごくいろんなとこ見ているんでしょうし、目指していると思います。そうしたことについては、話を聞いてみたいです」

家長は本田が今後、どういう生き方をしていくのかについて、話を聞いてみたいと正直に言っていた。

やはり気になる存在であり、現役選手としても切磋琢磨していく仲でもある。いずれ二人の間で何かが始まるのかもしれないと勝手に想像している。

「自分の理想や生き方は、自分にしかできない」
次は日本代表の話題だ。去年のインタビューで家長は代表への想いについてこう語っていた。

「当時は代表に強い想いはなかった。でも今、この歳になって後悔はしています。代表をもっと目指して、モチベーションを持ち、代表に選ばれたい、活躍したいって思えなかった自分に後悔しています」

この歳になって正直に“後悔”を告白できることに、彼の矜持を見た気がする。一方でこんな話もしていた。

「うち(川崎フロンターレ)でいえば、日本代表を経験した(中村)憲剛さんがいますし、(小林)悠もいます。それに元韓国代表の(チョン)ソンリョンさんもいます。僕は日本代表でもほとんど試合に出られなかったですが、憲剛さんやソンリョンさんはワールドカップにも出ています。そういう選手から学ぶことっていうのはほんとに多いんです。でも僕は、その人たちには、やっぱなれないっていうのが分かるんです。自分はいい所には行けなかったですし、日本代表に対してそこまでモチベーション持つことができなかったので。でもやっぱりサッカー選手として、その部分では足りなかったという反省はありますね。うちで日本代表に選ばれるような選手はいっぱいいるんですけど、本人に直接言ったことはないんですけど、頑張ってほしいです」

代表への強い想いを聞いたときに、そんな気持ちを抱いていたのかと正直、驚いたものだった。

ただ、後悔はしていても、自分の生き方に強い自負心があることも次の言葉で分かった。

「でも、自分の理想や生き方というのは、自分にしかできないと思ってもいます。それは学びながら吸収して、自分は自分で生きたい感じはあります」

自分で選んできた道に後悔はない――そう言っているようにも聞こえた。

「実は臆病で心配性で緊張しい」
昨年のインタビューの最後に一問一答をしたのだが、掲載できなかった。回答からは家長の素の表情が見て取れる。

Q:自分のこと、サッカーがうまいと思ったことがある?

家長:うーん、たまに。いや、でも、もっとうまくなりたいと思っています(笑)。

Q:川崎フロンターレは、自分にとってどんな場所?

家長:所属チーム(笑)。

Q:スペイン

家長:明るい!

Q:韓国

家長:優しい。

Q:大阪

家長:大阪は俺のアイデンティティーじゃないんですよね。でも大阪は自分の血みたいな、そういう感覚があります。

Q:大宮

家長:大宮、出てこない……(笑)。大宮って何もないんです、というのは冗談で(笑)。でも、本音は一言で“成長した場所”ですね。

Q:中村憲剛

家長:川崎フロンターレ!って感じです。

Q:実は私、●●なんです

家長:俺ですか……。でも、「実は」が結構多いタイプと思うんです。

臆病、心配性、不安性、緊張しいです。めっちゃ自信ありそうな感じを出してるんですが、全然です。自分から自信ないですっていうのは、あんまり恥ずかしくて言えないんですけど。

Q:無人島に持っていくならこの3つ

A:友だちを連れていきたいです。友だちとか家族とか、何かそういう人。人を3人連れていきます。やっぱり一番、頼れるのは“人”かなと思います。困ったとき、“物”ではないのは確かです。

Q:世界で一番好きなもの

家長:好きなもの、今はやっぱサッカーですね。

Q:世界で一番怖いもの

家長:人もあまり怖くないし、お化けも怖くないんです。あんまりそういうのは怖さを感じないですけど、何が怖いんやろうと思ったら、何ですかね……。やっぱり、死ぬ時に「これやっときゃ良かった」って思うのが、一番怖いかもしれないです。

Q:自分にとってサッカーとは?

家長:師匠、師範ですね。人生の厳しさも楽しさも、一番教えてくれました。人生の師匠です。

「子どもたちはとても敏感」
その後の話の流れで、最後に家族の話題になったのだが、それがとてもほのぼのとしたものだった。

家族を思うよき父親としての一面が垣間見られた。

「『関西に帰りたいやろ』とよくチームメイトに言われるんですけれど、そういう気持ちはないんですよ。クラブチームを転々とするので、家族が大変ですよね。いろんなところに連れているので、ある意味、色んなところに住めて楽しいと思われるかもしれません。ただ、家族は僕が振り回してしまっているので。だから子どもも大変やろうなとか、色々と我慢してくれてるんやろうなと思っています。例えば息子たちは移籍のニュースがあれば、『引っ越すの?移籍すんの?』と聞いてきたりもします。あまり多くは話しませんが、そういうのを敏感に感じ取ってくれています。嫁はほんとにありがたいことに、色々と気を使ってくれています」

クラブを転々とすれば、当然、子どもは転校せざるを得ない。友達とも仲が良くなり、環境に慣れたころにまたその土地を離れるようなことを家長はとても気にかけていた。

それでも家族に支えられて今がある――そう感謝の気持ちを述べる家長の表情はとても穏やかだった。

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