王者F・マリノスが敗れた理由。 研究し尽くされて、次の一手は?

2019年シーズン、横浜F・マリノスは攻撃色の強いサッカーで、J1を華やかに制している。ボールを握って、前に運ぶ迫力は随一。ディフェンスラインにチアゴ・マルチンスのように飛び抜けた守備者を擁したこともあって、攻撃の推進力を生み出していた。

<打倒、F・マリノス>

王者は周囲の敵に研究し尽くされる。それは宿命だろう。今シーズンは、その挑戦を退けることができるか――。

2月23日、横浜。王者・横浜FMは、J1リーグ開幕戦でホームにガンバ大阪を迎えている。横浜FMはボールを握って攻め、G大阪はそれを受けて裏を狙う。開始早々、その構図がはっきり見えた。

「スピードのある攻撃に対応する、という練習は回数を重ねてきました。ギリギリのところで体を投げ出せるか。やらせない、というシンプルなところで……」(G大阪・宮本恒靖監督)

前半、横浜FMは本来のパスゲームを展開できていない。パスのテンポ、精度、どちらも低かった。マルコス・ジュニオールの自陣へのバックパスのミスが相手に渡って、カウンターを浴びることもあった。ビルドアップの途中で引っ掛けられる気配が濃厚に漂った。

「自分たちのいつものスタートではなかったと思う。そこで、相手が士気高く、スピードアップしてきた」(横浜FM/アンジェ・ポステコグルー監督)

6分、セットプレーに続いて、GK朴一圭が素早くリスタートする。それ自体は、横浜FMらしい機敏さだった。しかし悪い流れが抜けきれないなか、出足の鋭い相手にはめられ、ボールを下げることになる。GKへのバックパスはやや乱れ、朴はトラップしきれず、ボールが流れたところを倉田秋に押し込まれた。無理につなごうとした結果、相手の術中にはまった。

「練習から、”前ではめていこう”というのはずっとやってきました。回されるのはわかっていたので」(G大阪・宇佐美貴史)

G大阪は前線から中盤にかけてのプレスを強め、プレーを分断していた。相手選手の特徴も研究。昨シーズンMVPの仲川輝人の持ち味である縦への突破は十分に警戒し、前線のプレーメーカーで昨シーズン得点王のマルコス・ジュニオールには遠藤保仁、井手口陽介の2人で対応した。攻撃も、横浜FMの脆弱な部分をえぐった。奪ったボールを斜めに入れ、プレスを回避し、高いラインの裏を狙ったのだ。

34分、横浜FMは相手GKが蹴ったロングボールに対し、オフサイドをかけられない。すると倉田にフリーで裏へ走りこまれ、マイナスの折り返しを矢島慎也に叩き込まれた(VAR判定でゴール)。

「昨シーズンから、ラインを上げた裏を狙われるという場面はあった。今シーズンも、それは変わらないということだろう。しかし去年、自分たちはこのサッカーで優勝したわけで、ラインを揃えてあげるタイミングを修正していくだけだ」(横浜FM/チアゴ・マルチンス)

この日の横浜FMは、戦い方のネガティブな面が露呈した。

しかし0-2とリードを許して後半に折り返すと、ポジティブな面も見せるようになる。左サイドからの攻撃を中心に決定機を作った。遠藤渓太が抜け出し、オナイウ阿道がクロスに合わせたシュートはわずかに枠の外へ外れた。

65分にはエリキを投入し、4-1-2-3のような布陣に変更し、攻勢を強める。そして74分、扇原貴宏のくさびのパスを受けたマルコス・ジュニオールが、反転して左足でゴール左上隅にコントロール。ようやく1点を返した。

「相手は自分たちのサッカーをスカウティングし、対策を練ってきた。ただ、これからもそれは同じだろう。後半は多くチャンスを作れていた。あとはラストパスの丁寧さや、フィニッシュを大事にしたい」(横浜FM/マルコス・ジュニオール)

横浜FMはその後も攻め続け、合計19本のシュートを放ったものの、2点目は奪えなかった。結局、前半に2失点を浴びたことが重く響いた。相手に研究されたこともあるだろう。しかし、自陣でパスを引っかけられる回数が多く、本来の出来には程遠かった。

やはり疲労は見えた。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を並行して戦う難しさ(2月19日のシドニーFC戦は4-0で勝利)は否定しがたいほどだった。足が重く、判断も鈍かった。

「(ACLの影響について)どう映ったかはわからないですけど、等しく疲れはあったと思います。でも、その言い訳は自分たちには必要ない。それを乗り越えていかなければならないので」(横浜FM・遠藤渓太)

開幕戦で横浜FMは王者の苦しみを味わっている。そのプレーはすでに研究されているし、ACLは重荷だろう。しかし、逆境に打ち勝つことで、王者はさらに偉大になる。そのために、オナイウや水沼宏太のような新戦力も補強したはずだ。

2月29日の第2節。横浜FMは、昨シーズン最後まで優勝を争ったFC東京と敵地で戦う。

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