2020年J1、識者の展望&順位予想。意外な優勝候補、不気味な存在は……。

Jリーグ開幕直前、NumberWebで筆を振るうライター陣にJ1リーグの展望を予想してもらった。東京五輪による中断期間、そしてACLと、さまざまな影響が出るだろう今シーズン。上位に進出するクラブはどこか。

■ 佐藤俊/スポーツライター

1位:ヴィッセル神戸
2位:鹿島アントラーズ
3位:横浜F・マリノス
4位:川崎フロンターレ
5位:FC東京
6位:北海道コンサドーレ札幌
7位:柏レイソル
8位:ガンバ大阪
9位:サンフレッチェ広島
10位:浦和レッズ
11位:セレッソ大阪
12位:名古屋グランパス
13位:大分トリニータ
14位:ベガルタ仙台
15位:清水エスパルス
16位:湘南ベルマーレ
17位:サガン鳥栖
18位:横浜FC
上位に割って入りそうな神戸。
昨季の上位3チームの横浜F・マリノス、FC東京、鹿島アントラーズは、間違いなく優勝争いに絡んでくるだろう。いずれも独自のスタイルを持ち、昨年のベースを維持し、補強でさらに戦力を上積みしているからだ。マリノスはオナイウ阿道や水沼宏太らの補強で攻撃の脅威が増した。鹿島はSB補強で守備を整備し、いやらしいチームに戻ってきそうだ。FC東京は新システムで攻撃の幅を広げている。

このBIG3に割って入りそうなのが、ヴィッセル神戸だ。

ここ数年バルサ化という言葉だけが踊り、中身はフラフラしていたが、酒井高徳、トーマス・フェルマーレンが加入した昨年の夏以降、守備が整い、選手の個性が活かされるチームになった。

強さを感じたのは昨年のラスト3試合だ。攻守にバランスが取れた戦いで3連勝を飾り、その勢いのまま天皇杯を勝ち取った。タイトル獲得でチームに一本芯が通り、選手は自信を持って今季に挑める。ビジャが抜けた穴はドウグラスが埋めたが、これは最高の補強だ。技術が高く、シュートもうまいし、サイドで起点にもなれる。ハマれば得点王争いに絡めるだろう。

不安は、ACL初挑戦で疲労などが懸念されることだ。だが、神戸は若手らの起用で個々の経験値を高め、チームの総力を上げていく時期で、むしろプラスに捉えたいところ。また、攻撃の出力は落ちるイニエスタが不在時に、既存の選手で乗り切っていくタフさが出せれば、「神戸戴冠」は夢ではない。

新システムの川崎、不気味な柏。
「来そうだな」というムードを漂わせているのが、川崎フロンターレだ。

昨季は、ルヴァンカップを獲得したが、リーグ3連覇を達成できずに4位に終わった。今季はシステムを4-3-3に変更し、攻撃的な顔触れを活かした布陣に着手。阿部浩之らが抜けたが、その分をカバーしながら新システムを完成させようという意欲がチームに満ちている。また、ACLがなく、リーグ戦に集中できることも大きい。故障離脱中の中村憲剛が戻ってくるまでが、ひとつのポイントになるだろう。

そして、最も不気味な存在なのが、柏レイソルだ。

昨季はJ2で圧倒的な強さを見せて優勝。京都戦で8ゴールを挙げたオルンガを始め、その戦力は今季も不変で、さらに即戦力クラスが大量に加入した。紅白戦で金を取れるだけの戦力を保持しているが、それをどう使いこなしていくのか。ネルシーニョ監督の手腕の見せ所だだろう。2011年にJ1昇格後、即優勝の歴史を持つチーム。台風の目になるか――。

マリノスの2連覇は実現するのか。FC東京は初制覇できるのか。見どころは多々あるが、上位チームはどこも強い。2020年シーズンも昨季と同様に、最終節まで優勝争いがもつれる展開になりそうだ。

今季は中断期間が1カ月半も早い。
■ 戸塚啓/スポーツライター

<上位グループ>
横浜F・マリノス
川崎フロンターレ
鹿島アントラーズ
セレッソ大阪
浦和レッズ
FC東京

<中位グループ>
ヴィッセル神戸
ガンバ大阪
サンフレッチェ広島
名古屋グランパス
北海道コンサドーレ札幌
柏レイソル

<下位グループ>
ベガルタ仙台
湘南ベルマーレ
清水エスパルス
サガン鳥栖
大分トリニータ
横浜FC

今シーズンは東京五輪の開催に伴って、7月上旬から約1カ月半の中断期間がある。実質的には2ステージ制と言ってもいい。

中断前の“第1ステージ”では、7月5日までに21試合を消化する。21節消化のタイミングは2019年が8月4日、ロシアW杯のあった’18年は8月11日、’17年は8月9日だった。これまでよりおよそ1カ月も早い段階で、全34試合のほぼ3分の2を戦うこととなる。

必然的に“第1ステージ”のスケジュールはタイトになるが、スロースタートは許されない。優勝をターゲットとするクラブも残留を命題とするクラブも、21節までにどこまで勝点を伸ばせるのかが、最終的な順位を左右するはずだ。

ACLと国内リーグの2冠は例がない。
順位予想は3つのグループに分けた。不確定要素が多いからだ。

ACLに出場する3チームは優勝候補に上がってくるが、勝ち上がり次第でスケジュールが変動する。ACLだけでなく国内のカップ戦でも上位に進出すると、スケジュールはさらに厳しくなる。

天皇杯覇者で昨シーズン8位の神戸を上位グループではなく中位グループとしたのは、初出場となるACLとの並行日程にどこまで耐えられるかが読み切れないからだ。アンドレス・イニエスタの稼働率に左右されるチーム体質が気になる。さらに言えば、トーマス・フェルマーレンがEUROに出場するベルギー代表に招集されると、5月中旬あるいは下旬から彼を欠くことになる。

ACLと国内タイトルを同時に獲得したケースは過去にない。そう考えると、ACLに出場しない鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ、セレッソ大阪らにもチャンスがある。鹿島は昨シーズン3位、川崎は同4位、セレッソは同5位と、いずれも地力のあるクラブだ。

個人的に注目するのはセレッソだ。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督のもとで、昨シーズンのJ1で最少失点を記録した。守備が計算できるチームは大崩れしにくく、連戦を乗り切るにあたっての強みを持つことにもなる。得点ランキングの上位に食い込むような選手が出てくれば、優勝争いに食い込めると予想する。

G大阪は昌子獲得で守備が安定?
中位グループではガンバ大阪に触れたい。

7位に終わった昨シーズンはリーグ4位タイの54得点をあげた一方で、48失点はリーグ10位だった。守備力の向上を実現すれば、昨シーズン以上の順位は確実に見えてくる。

トゥールーズ(フランス)から獲得した昌子源がピッチに立てば、攻守のバランスが整っていくだろう。’18年7月から采配をふるう宮本恒靖監督にとっても、勝負のシーズンである。

大分トリニータの下位グループは意外だろうか。昇格1年目で9位に食い込んだクラブは、「勝点55で6位以上」を目標に掲げる。それはもう当然のことなのだが、2年目は周囲の包囲網が厳しくなる。2年目に降格の憂き目に遭ったクラブは少なくない。

昨シーズン途中にそれまで8得点をあげていた藤本憲明が神戸へ移籍し、チーム最多の10得点をあげたオナイウ阿道も今オフにマリノスへ新天地を求めた。彼らに代わる得点源の確立が急がれる。

中断前の戦いぶりは間違いなく重要だが、五輪後に再開される“第2ステージ”での巻き返しはもちろん可能だ。ここでは夏の移籍市場での補強が、ひとつのポイントになってくる。足りないパーツを速やかに補ったクラブが、目標達成に近づくだろう。

優勝争いは上位6チーム。
■ 林遼平/スポーツライター

1位:川崎フロンターレ
2位:FC東京
3位:セレッソ大阪
4位:横浜F・マリノス
5位:ヴィッセル神戸
6位:鹿島アントラーズ
7位:ガンバ大阪
8位:柏レイソル
9位:大分トリニータ
10位:浦和レッズ
11位:サンフレッチェ広島
12位:清水エスパルス
13位:北海道コンサドーレ札幌
14位:名古屋グランパス
15位:湘南ベルマーレ
16位:ベガルタ仙台
17位:サガン鳥栖
18位:横浜FC

開幕前のこの時期が、Jリーグファンにとって最も楽しい時期だろう。今季の自分の推しチームはどうなるのか。あーだ、こーだと言ってワクワクできる。だが、シーズンが開幕すれば、喜怒哀楽のオンパレードが始まる。そして、シーズンが終わる頃には「あの時、何を言ってたんだ」と恥ずかしさを覚えるのが、サッカーシーズンの常である。

シーズン前の順位予想もそうだ。当たることもあれば、外れることもある。今回はせっかくの祭だと考えて順位予想に参加させてもらった。

優勝の可能性があるのは上位6チーム。現時点での総合力では既存戦力に加えてピンポイント補強を敢行したFC東京と横浜F・マリノスが抜けていると見ているが、両者に言えるのはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で先に進める力があること。そうなれば選手層があると言えど、日程的な面で厳しくなるのは明らかで、総合力で上回っていようとも優勝には届かないのでは、と見ている。

レアンドロ・ダミアンを生かせるか?
そう考えた時に優勝候補に浮上してくるのが川崎フロンターレとセレッソ大阪だ。

今季、川崎Fはこれまでの積み重ねにプラスして新システムに着手。まだまだ完成度は高くないが、守備面の課題さえ早期に解決できれば優勝できる力は間違いなくある。新システムではレアンドロ・ダミアンの特徴が最大限発揮できる可能性があり、彼が得点を量産できれば優勝が見えてくるだろう。

また、ロティーナ監督2年目を迎えるC大阪も本命候補。昨年、作り上げたチームにロティーナ監督好みの選手を加えるなど、プラス面しか浮かばない。前線では豊川雄太、中盤では坂元達裕が目に見える数字を残すことができれば、優勝争いをかき回すことになるはずだ。

時間はかかるだろうが、清水にも期待。
6位以下で楽しみにしているのは、ガンバ大阪、浦和レッズ、清水エスパルスの3チーム。

昌子源を加えたG大阪は、センターラインがバシッと整った感じがある。これで守備が整備され、かつ若手の台頭などがあれば、十分に上位を狙える力はあると見る。

また、浦和レッズは新システムも楽しみだが、J3、J2で得点王を奪取したレオナルドに注目している。3年連続別カテゴリーで得点王と夢のような記録を達成できるか。興梠慎三と共にゴールラッシュを披露すれば、予想した順位よりも上に行けるはずだ。

最後は新指揮官にクラモフスキー監督を招聘した清水エスパルス。ルヴァンカップの初戦で川崎に1-5で敗れたものの、新たなスタイルを構築しようとしているのは試合を見た人なら誰もがわかったはず。もちろん多少時間はかかるだろうが、このスタイルの完成度が高まれば、上位も狙えるチームになるのではないかと期待している。

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