ここ最近、J1残留ラインが高すぎる。プレミアやブンデスと比べても……。 11/7(木) 11:51配信

2019年のJ1も大詰め。鹿島・FC東京・横浜FM・川崎の優勝争いや来季ACL圏内争いが佳境を迎えている。しかし昨シーズンに続いて大混戦となっているのがJ1残留争いである。

この時期になってJリーグの試合会場に足を運ぶと、あることに気づく。

ハーフタイムだけでなく、試合中にもスマホにちょこちょこ目をやる人が増えるのだ。

それはよっぽどの急用じゃない限り、絶対に他会場の経過を見ている、はずである。かくいう筆者も「目の前の試合に集中しろ!」と言われそうだが、気になる試合はライブ配信を横目に観戦しているのだから。

今季もそんなファンやサポーターが増えるんだろうな……と思ったのは、J1第30節の結果である。最下位の磐田が清水との静岡ダービーを2-1で制し、勝ち点を「25」とした。そして下記は11月5日終了時点で残留争いに関わっているクラブの順位表だ。カッコ内の数字は(勝ち点/得失点差)である。

11位浦和は2試合消化済み……。
9位 G大阪(38/1)
10位 神戸(38/-1)
11位 浦和(36/-15)
12位 仙台(35/-8)
13位 清水(35/-22)
14位 名古屋(33/-6)
15位 鳥栖(32/-19)
16位 湘南(31/-23)
17位 松本(30/-14)
18位 磐田(25/-20)

磐田の立場から見れば、「J1参入プレーオフ」に回る圏内となる16位まで、残り4試合で勝ち点差6。徳俵に足がかかった状態なのは確かだが、まだ希望は捨てなくていいだろう。

そして11位浦和から自動降格の17位松本までが、勝ち点6差でひしめき合う状況。なお浦和はACL決勝を戦うこともあって2試合消化が多く、残り2試合で最大でも勝ち点6しか稼げない。3度目のアジア王者にあと一歩に迫っているクラブですら、リーグ戦では厳しい状況に追い込まれている。

過去10年の下位4クラブの勝ち点は?
ここ2シーズンのJ1残留争いは、以前にも増して混戦具合に拍車がかかっているのは確かである。

J1参入決定戦を含めれば1998年からあるJリーグの昇格・降格システムだが、残留争い渦中のクラブがこれほどまでに勝ち点を積み上げていただろうか。

そこでここ10年の下位4クラブ、残留確定の15位、そして16、17、18位の勝ち点を調べてみた。それぞれ第30節終了時点(2ステージ制の2015、2016年は2nd第13節時点)、シーズン終了時点の勝ち点だ。

<2009年>
第30節
大宮36/柏27/千葉24/大分20
第34節
山形39/柏34/大分30/千葉27

<2010年>
第30節
FC東京32/神戸30/京都16/湘南16
第34節
神戸38/FC東京36/京都19/湘南16

<2011年>
第30節
浦和32/甲府30/山形21/福岡18
第34節
浦和36/甲府33/福岡22/山形21

<2012年>
第30節
大宮36/G大阪33/新潟31/札幌14
第34節
新潟40/神戸39/G大阪38/札幌14

<2013年>
第30節
甲府31/湘南25/磐田20/大分13
第34節
甲府37/湘南25/磐田23/大分14

<2014年>
第30節
大宮31/清水31/C大阪30/徳島13
第34節
清水36/大宮35/C大阪31/徳島14

<2015年>
第30節
新潟30/松本27/山形24/清水21
第34節
新潟34/松本28/清水25/山形24

<2016年>
第30節
新潟27/名古屋26/湘南20/福岡19
第34節
新潟30/名古屋30/湘南27/福岡19

<2017年>
第30節
甲府28/広島27/大宮24/新潟16
第34節
広島33/甲府32/新潟28/大宮25

<2018年>
第30節
磐田34/鳥栖33/柏33/長崎29
第34節
名古屋41/磐田41/柏39/長崎30
※この年から16位はJ1参入プレーオフへ。

<2019年>
第30節
鳥栖32/湘南31/松本30/磐田25

改めて驚いた“ハイライン”ぶり。
最下位の勝ち点を見れば分かる通り、以前は勝ち点10台、多くても同20台前半で“早期脱落”が決まるケースが大半だった。

しかし昨シーズンの長崎は第30節時点で、’16年の新潟・名古屋のシーズン終了時とほぼ同じ勝ち点を積み上げており、底が上がっていると言っていいだろう。また今季の磐田は昨季の長崎より勝ち点4少ないとはいえ、ここ10年で2番目に多く勝ち点を稼いでいる。

なおかつここ2年は16、17位がすでに30台を突破している“ハイライン”ぶり。’12、’14年も同じ状況だったが、こうなると大混戦の印象が強い。

「残留ラインの勝ち点は全試合数±3くらい」と聞いたことがあるが、J1は世界的にも相当高いハードルなのではないか。そこでプレミア、リーガ、セリエA、ブンデス1部の2018-19シーズンの下位4クラブの最終的な勝ち点も見てみよう。

Jはプレミアよりもスリリング?
<プレミア>
※20クラブ、38試合、下位3クラブが自動降格
ブライトン36/カーディフ34/フルハム26/ハダーズフィールド16

<リーガ>
※20クラブ、38試合、下位3クラブが自動降格
セルタ41/ジローナ37/ウエスカ33/ラージョ・バジェカーノ32

<セリエA>
※20クラブ、38試合、下位3クラブが自動降格
ジェノア38/エンポリ38/フロジノーネ25/キエーボ17
(キエーボは不正会計で勝ち点-3の処分)

<ブンデス>
※18クラブ、34試合、16位が入れ替え戦で17、18位自動降格
アウクスブルク32/シュツットガルト28/ハノーファー21/ニュルンベルク19

昨季はリーガも大混戦だったが、残留ラインは勝ち点30台がほとんどである。また4カ国とJ1の「残留に必要な1試合あたりの勝ち点」も気になる。下から4番目のクラブの「勝ち点÷試合数」を以下の通り、算出してみた。

プレミア/36÷38=0.94
リーガ/41÷38=1.07
セリエ/38÷38=1.00
ブンデス/32÷34=0.94
J1/41÷34=1.20
※J1は2018シーズン。小数点3位以下は切り捨て。

Jと他の国では1試合あたりで「0.13~0.26」も違うし、これを単純に積み上げていけば34、38試合換算で「勝ち点4~8」くらい差が開く。つまり他のリーグより1、2勝多く必要だと見ていいだろう。

イニエスタもビジャもトーレスも。
Jが世界に誇るビッグネームも、実力伯仲についての発信者となってくれている。

誰あろう、アンドレス・イニエスタだ。

スペイン紙『マルカ』のインタビューに応じたイニエスタは、記者に“日本は老人ホームではない”という主張をしてるよね、と問いかけられてこんな回答をしたのだという。

「その通りだよ。僕は選手たち、そして各クラブの競争レベルに驚かされているんだ。とてもダイナミックで、たとえ0-3となっても彼らは足を止めない。この競争力を僕は気に入っている」

この言葉は本心だろう。何しろ昨シーズン、イニエスタやポドルスキ擁する神戸、そしてフェルナンド・トーレスがいた鳥栖が残留争いの真っ只中に放り込まれた。そして今季はジョーらがいる名古屋もギリギリの戦いを強いられている。もっと言えば過去にはフォルランがいたC大阪が降格の憂き目に遭っている。

世界的な名手がいても簡単には残留争いを抜け出せない――そんなスリリングさがあるからこそ、Jリーグの終盤戦は恐ろしくも、シビれる戦いになるのだ。

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