遠藤保仁、1000試合出場の偉業も「後悔だらけ」 ベテランだからこそ感じる「怖さ」とは?

人間って面白いもので、同じような状況に出くわしても…
ガンバ大阪のMF遠藤保仁が8月2日のJ1リーグ第21節ヴィッセル神戸戦(2-2)に途中出場し、公式戦1000試合出場の偉業を達成した。J1、J2、カップ戦、天皇杯、AFCチャンピオンズリーグ、日本代表戦など、すべての公式戦を含めて日本人初となる金字塔を打ち立てた本人を直撃。稀代のプレーメーカーが、全6回で1000試合出場の舞台裏を語る。第3回のテーマは「後悔と慣れ」だ。

◇   ◇   ◇

プロサッカー選手として、1000試合を戦い、そのほとんどで先発してきたことは誇りに感じているけれど、実はその中身はすごく後悔だらけです。

そもそも、サッカーは、ミスが起きて当たり前のスポーツだからね。「あの時、あのパスが通っていたらな」「このプレーを選択していたらゴールにつながったかもな」「あそこで決めていたら勝てたかも」。試合に勝った、負けたに関係なく、出場時間が長くなるほど、ミスの数も多くなるわけで、イコール、後悔だって増えていきます。

だけど、それと同時に、反省は知恵として蓄積されていく。以前に失敗した時と似たようなシーンが生まれた時に、後悔の種となっていた過去のシーンは当然、頭をよぎるし、それが教訓になって違うプレーを選択できることもある……のは稀で、ほとんどがそうではないかも(笑)。

人間って面白いもので、同じような状況に出くわしても「今度は成功するかもな」って思いが勝って、あるいは単なる癖もあって「ああ、また同じミスをしちゃった!」ってことがほとんどだと思う。サッカーのように瞬間的に判断を要するスポーツではなおさらね。

でも、そうやって何回も失敗するから、頭ではなく体がいろんなことを学ぶようになり、気がつけばそれを上回る知恵やプレーの選択肢が備わって、それが本当の“プレーの幅”になっていく。

特に僕のように、同じチームで長く同じプレーをしていると、なおさらそこは危険
ただ一方で、“慣れ”は怖いなとも思います。試合をしすぎているからか、時に目の前で起きていることに対してではなく、過去の経験値で判断してしまうこともあるから。特に僕のように、同じチームで長く同じプレーをしていると、なおさらそこは危険だと思う。

監督が代わり、一緒にプレーする仲間が変わっても、キャリアを通して刷り込まれた感覚、経験値は自分の中に深く根を張っているからね。本来なら、目の前で起きていることに応じて、変化させていかなければいけないのに、そのまま出してしまうというか。

分かりやすく言うと、学校への通学路を、毎日、当たり前のように歩いていたら、実はもっと早く到着できる新しい道ができていたことに気づかなかった、的な。これはきっと僕だけじゃなくて……実際、そのマンネリ化に陥らないようにするために“移籍”を選択する選手もいるんじゃないかな。

でも、僕の場合は、それを選択しない代わりに、同じ場所にいてもあえて違うことを探してきたというか。例えば、見た目としては同じ練習をしていても「また、この練習か~」で終わらせないために、自分なりのアプローチを変えるとか、脳の中で設定を変えるとか。

だから同じ場所にいても、常に新鮮にサッカーに向き合えてきたし、飽きることなくサッカーを楽しめてきたんだと思う。

(第4回「第一線で活躍し続ける極意」に続く)

■遠藤保仁「公式戦1000試合」内訳(G大阪調べ)
公式戦1000試合・148得点

J1リーグ:621試合(歴代2位)・103ゴール
J2リーグ:33試合・5ゴール
Jリーグ・チャンピオンシップ:3試合・0ゴール
リーグカップ:72試合・5ゴール
天皇杯:48試合・10ゴール
富士ゼロックススーパーカップ:6試合・0ゴール
クラブワールドカップ:3試合・0ゴール
AFCチャンピオンズリーグ:58試合・10ゴール
スルガ銀行チャンピオンシップ:1試合・0ゴール
A3チャンピオンズカップ:3試合・0ゴール
日本代表戦:152試合(歴代1位)・15ゴール

リンク元

Share Button