【二宮寿朗の週刊文蹴】遠藤保仁も村田諒太も「目が命」

芸能人は歯が命―。昔、そんなフレーズの歯磨き剤のCMがあった。

芸が命、顔が命…人によって「〇〇が命」は違うはずだが、歯は意外性もあって世間にも受けた。

ならばサッカーはと言うと、意外なところで「目が命」とする選手がいる。ご存じ、G大阪の遠藤保仁である。今年1月に話を聞いた際、オフの日に子供と公園で一緒に遊びながら間接(周辺)視野を高めることをやっているのだという。間接視野を簡単に説明すれば、ボーッと見える視界の外側に映っているものとでも言おうか。遠藤は周囲の子供たちを間接視野で認識して「あの子は次にブランコに行く」などと予測を立てるそうだ。

「僕は目のトレーニングの大切さに気づくのがちょっと遅かった。年を取っていくと視力は落ちますよね。でも僕の場合、目のトレーニングに対する意識が強くなって、そこからの情報量も上がっているので、落ち幅と上がり幅がそんなに変わってないと思うんです。これができているとどんなところにもパスは出せる」

プロ22年目、39歳。今季はスーパーサブの役割が多くなっているものの、遠藤が入るとチャンスを生むパスがそこから出てくる。6月29日の松本山雅戦ではゴール前に入っていく倉田秋に合わせてアシストした。目と脳と技術をかみ合わせることによって決定的な役割をこなしている。

ボクシングに目を移せば、ロブ・ブラントとのリマッチに臨む村田諒太も「目が命」の人。日常生活の中でも指の先を目に近づけながら5秒間ほど見るように心掛けているそうだ。「相手のパンチを見切るためにも近いものがはっきり見えたほうがいいし、間接視野で広く見えたほうがいい。相手を倒すのも目、自分を守るのも目」と語る。

目と脳の活性が認識と予測を広げ、パフォーマンスを向上させる。「目が命」のアスリートは増えていくに違いない。

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