「名前でサッカーはできない」ガンバ宮本監督、二つの決断で首位相手のクリーンシートに導く

敵将の長谷川監督も「まるで別のチームと対戦しているようだった」とその変化を認める

[J1リーグ10節]G大阪0-0FC東京/5月4日(土)/パナスタ

敵将の長谷川健太監督の言葉がすべてだった。
「まるで別のチームと対戦しているようだった。隙を与えてくれなかった。今日のガンバのデキからすれば勝点1は悪い結果ではない」

無得点に終わったが、守備では全員がハードワークをし、球際でも果敢に戦った。マークの受け渡しやポジションのスライドもスムーズ。鋭いカウンターが最大の武器である首位・FC東京に決定機を許さず、G大阪は今季2度目のクリーンシートを成し遂げた。

「名前でサッカーはできない。どういうパフォーマンスができるか。チームが勝利するためのメンバーを考えました」

宮本恒靖監督が振り返ったように、この試合は大きな“サプライズ”で幕を開けた。日本代表DFの三浦弦太をスターティングメンバーから外す荒療治。前節・仙台戦では2失点に絡むなど今季は一向に調子が上がらない主将を外すのはプロフェッショナルの観点からすれば当然だ。だが、17年のG大阪移籍後はすべてのリーグ戦でスタメン出場。勇気のいる決断だったはずだ。同時に、そこに手を付けざるを得ないくらいガンバは追い詰められていたと言って良い。

綻びの始まりは3月30日の神戸戦、前半45分からだった。ツメが甘く、FKの流れからFWポドルスキに決められた。さらに警告を受けていたMF高宇洋に恩情を掛けて引っ張り、それが一因で失点を重ねた。続く4月6日の広島戦では今季の課題である試合の入り方に失敗し、開始7分までに2失点。予測、ボールホルダーへのチェイシング……小さなミスが重なった。浦和戦も大分戦も相手の対策や戦術に屈したのではなく、昨季までできていたことができていない、自滅に近い失点。遠藤が「メンタルの問題」と話していたように、ミスの連鎖が余計にプレーを縮こまらせてしまっていた。ミスが大前提のサッカーにおいて、「ミス=悪」の雰囲気になっていた。仙台戦後のチームのムードは、周囲の目から見ても最悪に近かった。

一変させるには何か大きな手を打たなければならない。指揮官も現役時代は主将を務めながら、スタメンを外された経験がある。三浦にすべての責任を背負わせたのではなく、チームに及ぼす影響やカンフル剤的要素も計算に入れていただろう。そして、この試合で警告を受けていたMF高を前半だけで交代させるドライな采配。今季は交代の遅れが目立つ指揮官だが、試合前とハーフタイムに大きな決断をしたことが首位を苦しめる背景にあったのではないだろうか。

崖っぷちに立たされていたチームは、なんとか踏みとどまった。ミスを恐れるのではなく、チャレンジ&カバーに転じられた。これを継続できるか。次戦はアウェー鳥栖戦、そしてセレッソとの「大阪ダービー」が待っている。ここからの2連戦は今季の分水嶺だ。

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