“元バルサ”も苦労したガンバのハイプレスには、思わぬ盲点があった

ダブルボランチを軸に、”元バルサ”の中盤をハイプレスで封じた。

「ハイプレスがきて、そこからどう抜け出せばいいのか、上手く見出せない時間帯もありました」

ヴィッセル神戸のセルジ・サンペールは、ガンバ大阪の守備をこう評価した。決してリップサービスではないだろう。実際、ハイプレスに怯んでやむを得ずバックパスを選んだ回数は多く、“元バルサ”らしい効果的なパス捌きを見せたとは言い難い。神戸加入後初スタメンを飾ったスペイン人MFの苦戦は、フアン・マヌエル・リージョ監督も同情した。

「サンペールは普段ならインサイド(ハーフ)にボールをつけることができますけど、今日はできなかった。ガンバ大阪が(プレッシングによる)ボール奪取とその後の展開も狙っていたからです。サンペールは良かったですが、ガンバ大阪を評価しないといけないです。先発としてのデビューと考えたら、違う日のほうが良かったと思う」

敵将も称えるガンバのハイプレスは、前半までサンペールのみならずアンドレス・イニエスタも封じていたと言える。24分、菅沼駿哉がイニエスタに入った縦パスをインターセプトし、スルーパスでファン・ウィジョのゴールをアシストした2点目の場面は、チーム全体が連動したプレッシングの象徴だった。

そのディフェンスを体現するうえで、肝になっていたのは倉田秋と高宇洋のダブルボランチだろう。倉田が相手の中盤への果敢なチェイシングでボール奪取にかかり、そのまま攻撃参加して縦への推進力をもたらす。その間、高は首を振って横を注視しながら幅広く動き、中盤のバランスを保っていた。

倉田が「相手のパスミスを狙って、そのまま(攻撃に)つなげる狙い通りの2点が取れた」と言えば、高は「秋くんを前に出させて、自分がリスク管理をする。プレスバックもして、イニエスタのところも潰し切れているので、ほとんどやらせなかったのは良かった」と述べる。

絶妙な補完性があるこのボランチコンビは、電光石火のショートカウンターを完遂させるキーマンになっていた。1-0で勝利した前節の川崎戦から続く好パフォーマンスと、“前半までは”思わせる出来だった。

ハイプレスは後半に限界が。盲点だったのは……。

 しかし、限界はきた。

2-1で迎えた54分、右サイドをルーカス・ポドルスキに抜け出され、高がカバーするも当たり負けしてクロスを上げられる。中央でマークを外したダビド・ビジャがヘッドで合わせ、同点にされた。その後、ゴール前に侵入した倉田が遠藤保仁のアシストで勝ち越し点を決めるも、80分にはポドルスキのロングフィードを起点に古橋亨梧→田中順也の連係で再びタイスコアにされ、最後は3点目と同じコンビで89分に逆転弾を決められた。

無残なまでの逆転劇に、改善点はいくつか挙げられるだろう。遠藤は良かった点を評価しつつ、次のように話した。

「良い形でリードできましたし、相手にもほとんどチャンスを作らせていなかったと思います。もちろん、チャンスがあるならリスクを冒していかないといけないです。ゲーム自体のバランスは崩さないように、というのを一番に考えていました。前に行ける時はあの展開でもアグレッシブに行くべきだと思います。それをやりすぎてバランスを崩すようであれば、中盤など、そういう選手がゲーム落ちつかせる役割になってくると思います」

勝っているチームがボールを保持して試合の主導権を握り、時計の針を進めるのはひとつの手段としてあったかもしれない。バランスを保つための、攻撃面における選択肢だ。

では、守備面のバランスはどうだったのか。決勝点はルーズボールの処理が遅れた藤春廣輝の個人ミスが直接的な要因だったが、2、3失点目は組織が崩れた問題点があった。

2失点目の場面では、ボランチの高が右サイド深くのカバーを余儀なくされ、3失点目のシーンでは、最終ラインが高い状態だったが、前線からプレスをかけられていない。これでは、ポドルスキに正確なロングフィードを蹴らせてしまい、古橋に裏のスペースを突かれるのも当然だ。

ダブルボランチの運動量は豊富だった。証拠として、倉田はこの試合で最高の数字である12.583キロを走っている。個々は奮闘したが2、3失点目に代表されるように、誰かがラインコントロールをしながら、守備のバランスを保てていたとは言い難い。

90分間、強度の高いプレッシャーを前線から要求するのは難しい。堅守を築けるチームのほとんどは、CBかボランチに味方へ指示しながら守備を統率する選手がいるものだ。だからこそ、倉田は「CBとボランチ僕らがしっかりとやれば、勝っていけると思う」と言うのだろう。

神戸戦の後半は、明確なディフェンスリーダーの不在が響いたのではないか。宮本恒靖監督はここからどんな修正を施すのか、注目だ。

リンク元

Share Button