敗因は「遠藤保仁不在」。落ち着かない中盤、変化のないリズム。MF陣に求められる構成力の向上 フットボールチャンネル 8月3日(月)10時27分配信

中国・武漢で行われている東アジアカップ。日本は初戦 で北朝鮮と対戦して1-2と逆転負けを喫した。6月のシンガポール戦と続いて2試合連続で結果を出せなかった要因には中盤の構成力が挙げられる。この先、 ハリルホジッチ監督があえて外す遠藤保仁の穴を埋めることはできるのだろうか。

攻守に顕著だった詰めの甘さ

 韓国で開催された2年前の前回大会に続く連覇を賭けて、2015年東アジアカップ(武漢)に参戦する日本代表。2日の初戦・北朝鮮戦で確実に勝って、勢いに乗りたいところだった。

気温35度・湿度50%超の猛暑に劣悪なピッチコンディション、7月29日のJ1第2ステージ第5節のゲームから中3日という超過密日程にもかかわらず、日本の出足は悪くなかった。

開始早々の3分、この日初キャップを飾った右サイドバック・遠藤航(湘南)の精度の高いクロスに同じく代表デビューの武藤雄樹(浦和)が巧みに合わせていきなり先制点をゲット。最高のスタートを切った。

その後も12分の宇佐美貴史(G大阪)の左からの強烈シュート、13分の武藤の反転シュート、24分の川又堅碁(名古屋)のGKとの1対1、44分の永 井謙佑(名古屋)のフリー場面など数多くの決定機を作ったが、まるで6月のシンガポール戦(埼玉)の再現のように決めきれない。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「今日も10以上の決定的なチャンス。このように失敗し続けてはいけない」と苦言を呈するしかなかった。

案の定、足が止まってきた後半は防戦一方に。柴崎岳(鹿島)を投入して4-3-3に布陣変更しても流れは変わらない。逆に長身FWパク・ヒョンイルを投 入してきた北朝鮮のパワープレーに屈指2失点。相手の術中にまんまとはまった挙句、逆転負けを喫する最悪の展開。やはりショックが大きかった。

「チームのフィジカルの問題で、最後まで持ちこたえることができなかった」と指揮官はコンディション調整不足が最大の敗因だと分析した。が、決してそれだ けではないだろう。攻撃陣はシュートの雨嵐を浴びせながらも追加点を奪えず、守備陣は肝心のところでマークを外したり、セカンドボールを拾えなかったりす る。チームとしての詰めの甘さは顕著だった。

中盤の統率力、構成力、ボール保持力の向上は必須

 こういう悪循環が起きるのは、攻守両面で90分間、単調なリズムになっているから。相手に蹴りこまれた後半は特にそうで、ズルズルとラインが下がり、 ボールを奪ってもタメを作れないからまた守勢に回る。中盤の落ち着きどころ、リズムの変化をつけるところがないのは明らかだった。

「セカンドを拾うことは何回かできてましたけど、ボールをもっと大事にしないと。前に蹴り出したり、外に蹴り出したりするんじゃなくて、もっと大事に自分 らのボールにする必要があったのかなと思います」と代表戦で初めてキャプテンマークを巻いた森重真人(FC東京)が語る。

一方で攻守の要の役割を担った山口蛍も「もっとラインを高く取ってもよかった。彰悟(谷口=川崎)がいるからヘディングで強いのは分かるけど、蹴る前か ら最終ラインの中に入って構えてたから、それだとラインがずるずる下がってしまう。もっと上げるべきだったかなと思います」と全体を押し上げられなかった 反省を口にした。

やはり中盤の統率力、構成力、ボール保持力がより高くないと厳しいのだ。

この日の日本代表は山口と谷口のダブルボランチで前半を戦った。谷口はクラブでセンターバックに入っていることから分かる通り、守備で強みを発揮するタ イプ。その分、山口がゲームメークにより積極的に関与しなければならなかった。前半は比較的そういう形ができていたが、時間の経過とともに守勢に回るよう になってしまった。

そこで後半から柴崎を投入し、彼と山口のダブル司令塔のような形にしたのだが、2人のところであまりボールが収まらない。柴崎は負傷の影響が多少なりともあったのかもしれないが、彼らが時間を稼がなければ、試合の流れはどんどん北朝鮮に行ってしまう。

監督との次戦、カギを握るボランチ勢の奮起

 アンカー役を担った谷口も「前にボールを出す時間を長くして、落ち着くところは落ち着かせてコントロールというのを、真ん中である僕がうまくやらないと いけなかった」と消極的になった自らの仕事ぶりを悔やんだ。結果的に日本は相手の思惑通りの展開に陥り、アッサリと敗れてしまったのだ。

遠藤保仁(G大阪)が中盤をコントロールしていた時の代表であれば、苦しい時間帯でも日本ペースに引き戻すだけの地力が感じられた。ハリルホジッチ監督 はその遠藤をあえて外し、若い世代だけで勝てるチームを作ろうとトライしているが、現時点ではスムーズに進んでいるとは言い切れない。アジアと対戦し、苦戦するたび、遠藤不在の大きさが色濃く浮かび上がってくるのが現実だ。

今大会メンバーに前回優勝の立役者の1人である青山敏弘(広島)や負傷離脱した柏木陽介(浦和)がいればまだ違ったかもしれないが、いない選手のことを追い求めていても仕方がない。現有戦力で巻き返しを図るしかないのだ。

とにかく、山口、谷口、柴崎に加え、控えに回った藤田直之(鳥栖)、米本拓司(FC東京)らボランチ陣にはより試合をリードしていく強い意識が求められる。それがないと、中国を2-0で一蹴した次の相手・韓国には勝てない。

前回大会MVP、2014年ブラジルW杯経験者である山口にはよりその意欲を前面に押し出してほしいところ。初戦黒星の反省を生かすしか、チーム立て直しの術はない。

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