東アジア杯、本田が示した最重要課題とは。宇佐美に武藤、浅野…個々の争いがチーム強化を促す フットボールチャンネル 8月2日(日)10時29分配信

中国・武漢で幕を開ける東アジアカップ。日本は2日、 北朝鮮戦を迎える。大会前、同じく中国でプレシーズンを戦っていた本田圭佑は、今大会の注目ポイントとして「ゴール前の精度」を挙げていた。宇佐美貴史ら アタッカー陣は指揮官も懸念する決定力不足解消のきっかけをつかむことができるか。

未知数ながら楽しみなアタッカー陣。東アジアのライバルに挑む

「前回優勝していますよね。だから、そのプレッシャーに打ち勝つのは簡単ではないでしょうけど、ポテンシャルは確実にあるので。厳しいところ、相手のゴール前と自陣のゴール前、結局そこなんでね、勝負どころというのは」

インターナショナル・チャンピオンズカップ(ICC)中国2015のレアル・マドリー×ミランを取材した時、本田圭佑が東アジアカップについて語った言 葉だ。その本田をはじめ海外組が参加しない今大会で連覇を狙う日本代表にとって、大きな注目ポイントになるのは敵陣と自陣のゴール前、特に前者で決定的な 仕事をできるかどうか。

エースの岡崎慎司や香川真司、本田に加え、ブラジルW杯後に台頭した武藤嘉紀もマインツ移籍が決まり参加しないが、ハリルホジッチ監督の就任からメン バーに名を連ね、主力として定着しつつある宇佐美貴史、ここに来て調子を上げている川又堅碁やケガから復帰した興梠慎三、現在の攻撃スタイルを象徴する縦 のスピードを持つ永井謙佑が東アジアのライバルを相手にどう活躍できるか未知数な部分が大きい分、楽しみはある。

加えて初招集の選手たちにも期待が高まる。Jトップレベルのテクニシャンでありながら攻守にハードワークできる倉田秋、5月のミニ合宿で評価を上げ、 U-22代表のコスタリカ戦では同年代のエース候補としてアピールした浅野拓磨、そして今回はMF登録ながら今年のJリーグで9得点を記録している武藤雄 樹とポテンシャルの高いアタッカーが揃っている。

振り返れば前回大会でも優勝がかかった3試合目の韓国戦は内容的にかなり苦しい展開だったが、一本の縦パスに柿谷曜一朗が持ち前のスピードを活かして抜け出し、高度なボールタッチで相手GKを破るという形が見事にはまり、勝利をもぎとった。

今回は0-0に終わったシンガポール戦の後ということもあり、なおさら決定力の部分は問われてくるし、ゴールを決めた選手は今後の定着に向けて大きなアピールになる。

チーム内の“点取り合戦”に期待

「この3試合で、できるだけ可能性のある選手を使おうと思っています」と語ったハリルホジッチ監督。Jリーグの疲労やケガ人が出ていることもあり、最初の 試合となる北朝鮮戦は前日の練習でコンディションなどを見極めた上で、準備している「3つのオーガナイズ」(基本的にはシステムとほぼ同意)をベースに起 用法を決めていくプランを明かした。

ハリルホジッチ監督は過去に率いたチームで選手の組み合わせや対戦相手に応じた多くのシステムを用いており、3バックや5バックの引き出しもあるが、 チーム作りの過程を考えれば、フレッシュなメンバー構成になる今回はここまでベースになっていた「4-2-3-1」に加え、「4-3-3」(流れで 「4-1-4-1」に可変)、「4-4-2」が選択肢になると考えられる。

前日の夕方に行われた練習のハーフコートマッチで、スタメン組と思わしきビブス組は[4-2-3-1]でGK西川周作、DFが右から遠藤航、森重真人、 槙野智章、藤春廣輝、ボランチが谷口彰悟と山口蛍、2列目が右から永井謙佑、武藤雄樹、宇佐美貴史、1トップに川又堅碁というメンバーだった。

サブ組と見られる側も形は[4-2-3-1]だが2列目の中央にFWの浅野が入り、興梠と縦の2トップを形成しており、左は倉田、右には本職がボランチ の米本拓司が入る様な形。米本は流れの中で宇佐美の動きをマンマーク気味にチェックするシーンも見られ、短い時間の中でも守備面で特徴を出しており、この 構成では左の倉田が攻撃の起点になるのは明らかだ。

そうしたメンバーによる細かい役割分担や動きのパターンは変わってきそうだが、結局のところ本田が語っていた様に、彼らがゴール前でしっかり仕事できる かどうか、ゴールに絡めるかどうかがプライオリティになることは間違いない。チームプレーが前提ではあるが、ある意味ではチーム内の点取り合戦にもなって くる。

日本の新たなオプションとなれる武藤雄樹

 左サイドでのスタメン出場が予想される宇佐美は「得点もそうですし、得点を作り出すアシストというか、アシストといっても質の高いワンタッチで決めさせ る、2タッチで決めさせるようなアシストとかはやっぱり攻撃を数字で引っ張っていくことはしたい」と語り、自分らしいプレーを出していくことがゴールに直 結することを自負している様子だ。

ここまでの対戦で北朝鮮は深い位置である程度、ボールを持たせてくれるものの、アタッキングサードに入るところで起点になる選手をガッツリとマークして くる傾向が強い。宇佐美は体も気持ちも当たり負けしないことの重要性を踏まえながらも「技術でいなせるプレーができれば全く問題ない」と語る。

もちろん個の打開力だけでなく、アタッキングサードで日本らしいコンビネーションを出せるかは得点のポイントになる。全体的に慣れないメンバーの中で宇 佐美と倉田、武藤と興梠、川又と永井という所属クラブのコンビは1つ有効にはなるが、川又と浅野など特徴的に面白い組み合わせもあり、ハリルホジッチ監督 がどう組み合わせるか注目される。

トップ下でテストされた武藤は「しっかりしたトップ下はないけど、2トップの下がり気味でやったり、シャドーもトップ下に近いものがあるのでそこまで困 ることはない」と語る。ハリルホジッチ監督にゴール前の動きなどを強く言われた様だが、起点になるべきところはなりながらゴール前に迫力を出していければ 日本に新しい崩しのオプションを提供できそうだ。

ジョーカー・浅野のポテンシャルにも期待

 早い時間帯の先制点を狙いたいが、接戦で終盤を迎えた場合のジョーカー的な起用も気になるところ。その意味でも大きな可能性を秘めているのが最年少で選 ばれた浅野だ。今季は広島では1stステージの第5節から18試合連続で途中出場。限られた時間で4得点をあげ、またゴールに直結する飛び出しでチームの 得点に絡んでいる。

「最初から出たいという気持ちはある」という浅野はウィングかセンターFWかというポジションも含め「どういう時間帯でどういう役割を与えられたとして も、やるべきことはあまり変わらない」と語り、爆発的なスピードを発揮しながら、100%チャレンジしていくことを誓っている。そして何より意識するのは ゴールだ。

「FWである以上はゴールというのはつながっていますし、代表で試合に出られれば得点を取りたいと思ってこの場に来ているので、結果という部分で次にもつながると思いますし、そこはしっかりこだわってゴールを決めたい」と浅野。

ハーフコートマッチでは武藤と同じくトップ下に組み込まれたが、意味合いとしてはシャドーストライカーだろう。実際にあまり中盤の組み立てには参加せず、タイミングを見ながら積極的にDFラインの裏を狙う姿勢を見せていたのが印象的だ。

全てのポジションにアピールのチャンスがあり、ハリルホジッチ監督も現時点で不足を感じているポジションに関しては明言していないが、前線に新しい戦力が出てくればアジア予選に向けてもチームの活性化につながる。

連覇を目指す上で得点は必ず求められるものだが、そこに直結する役割を誰が果たすのかを北朝鮮戦から注目してチェックしたい。

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