開幕3連敗のガンバ大阪は大丈夫?遠藤保仁に聞いたクルピ流の攻撃像。

開幕3連敗――。

開幕戦の名古屋戦は2-3で打ち負け、鹿島戦は0-1で完封負け、川崎戦は0-2というスコアだがシュートはわずか2本、決定的なチャンスを1つも作れなかった。ここまで完膚なきまでやられたのは3年前のナビスコ杯決勝の鹿島戦以来だろう。

遠藤保仁も「今日はいいところがなかった」と完敗を認めていた。

周囲では「ガンバ大阪は大丈夫か」と現状を不安視する見方が広がっている。

今季、ガンバはレヴィー・クルピが監督に就任し、ポゼッションを主体とした攻撃サッカーへの回帰をうたった。

昨年までは守備のブロックを作り、ボールを奪って早く攻めるカウンタースタイルだったが、引いた相手を崩せず、リーグ戦は8月26日の鳥栖戦(第24節)に勝ったのを最後に、シーズン終了まで10試合勝てずに終わった。総得点数は48得点で10位に沈み、攻守に特徴のないチームになってしまったのだ。

クルピ新監督の存在はポジティブ。

 クラブはアイデンティティを失う危機感からクルピを招聘した。

これはチームにとっても、遠藤にとってもポジティブなものだった。

クラブは、選手育成に定評があるクルピに、強いガンバの再建とクラブのスタイルである「攻撃的サッカー」の再生を託すことができる。

遠藤はここ数年ポジションが定まらず、チームが求めるスタイル上、良さが出にくくなっていた。だが攻撃的なサッカーであれば自分の力を最大限に活かせる。

開幕前、クルピが目指すサッカーについて、遠藤はこう述べた。

「昨年とは戦術がまるで違う。ボールを握りながら試合を進めていくのを重点に置いて、早い攻撃でも遅攻でも、どんな攻撃でも点が取れるようなチームを目指している。3点取られても4点取って勝つサッカーができればと思っています」

どつきあいのサッカーは優勝した2005年のガンバのスタイルだが、遠藤が現在抱いている攻撃のイメージは、中盤だけで攻撃を組み立てる当時のスタイルではない。チーム全体が関わるビルドアップで押し込み、遠藤が賞賛する川崎のようにポジションを臨機応変に変えて攻めていくスタイルだ。

イメージは明確だが、実現はまだ遠い。

 「スタートのポジションはあるけど、それは重要じゃない。たとえば自分の最初の立ち位置がトップ下だとしても、別にずっとそこにいる必要はなくて、味方のポジションを見ながら自由に動き、うまくチームを回していって多くのチャンスを作って点を取れるようにしていく。

ボランチの時はボランチとしての役割を果たし、相手が攻めている時でも常に得点をイメージして守備をしていく。そういうレベルの高いプレーをしていきたい」

イメージは明確だが、そういうプレーをピッチ上で実現するまでには至っていない。

相手との力関係もあるが、ビルドアップで押しこむ展開ができていない。攻撃のパターンも名古屋戦の2点がそうだったようにサイドからの展開が圧倒的に多く、遠藤が今季の狙いとしていた、相手のバイタルエリアでのボール回しはほとんどできていない。そこからチャンスを広げることもできていない。

守備は高い位置からボール奪取を目指しているが、川崎戦では奪えないので引いて守備のブロックを作り、カウンターを狙うしか術がなかった。結果として奪ってからテンポよく攻めることができず、引っかかって逆に再度カウンターを喰らうという悪循環だった。

遠藤は守備について「飛びこまず我慢した」と言ったが、自陣に押しこまれても取りに行かず、何分間もボールに触れられない時間がつづいたのには、ちょっと驚いてしまった。

中盤の組合せはまだ手探り状態。

 戦術が浸透するための時間が足りないこともあるが、ユニットのコンビネーションや組み合わせにも問題がある。

クルピは選手の配置や適性などまだ見極めている段階で、特に昨年と違うのは中盤のユニットだ。

ボランチの井手口陽介がスペインに移籍し、今野泰幸は右足首の捻挫で離脱中。今は、主に遠藤と市丸瑞希がボランチでプレーしている。

攻撃力の高いコンビだが、守備力は今ひとつ。クルピは矢島慎也&市丸、遠藤&市丸と試し、いずれも「バランスがよくない」というが、これは選手たちが問題なのではなく、組み合わせの問題だ。今野が復帰し、守備的な選手が入るとバランスは良くなるだろうが、遠藤以外の選手との相性は分からない。

降格を心配するような段階ではない。

 攻撃的MFは、川崎戦では井手遥也と中村敬斗だった。遠藤は井出とは昨年ほとんど一緒にプレーしておらず、ルーキーの中村とは今年からだ。

彼らと絡み、ダイレクトで相手を崩したり、スルーパスで決定的な仕事をする機会がほとんどなく、2人との連係については「まだまだ改善すべきことがある」と言うように時間が必要だ。

結果が出ない現状にJ2降格を危惧する声が出ているが、今はそこまで心配する必要はないだろう。

2012年、J2に降格した時はセホーン&呂比須体制が攻撃的サッカーからカウンターに移行したことに最初から選手がアレルギー反応を示し、チームがバラバラになってしまい、そのまま修正できずJ2に転げ落ちた。

その時とは異なり、選手はクルピのサッカーをポジティブにとらえている。選手に積極的にやろうという意志があるので、勝利というキッカケがあればうまくチームが回っていく感触はある。

新しいガンバのスタイルはいつ?

 「川崎戦とルヴァン杯の広島戦は内容が良くないけど、名古屋戦と鹿島戦はそんなに悲観するような内容じゃなかった。自信は失っていない。結果が一番重要なんで、1勝してチームを落ち着かせたい」

川崎戦後、遠藤はそう言って前を向いた。

14日にルヴァン杯で浦和に勝ち、チームは一息ついた。「これからは泥臭く戦うことが大事」と遠藤が言っていたが、浦和戦ではその姿勢が見えた。「泥臭く」を愚直に実践する先に新しいガンバのスタイルが見えてくる。

それを次のリーグ戦の柏戦、FC東京戦でも見せられるかどうか。そこで負ければ、ガンバ危機説に油を注ぐことになる。だが、勝つことができれば、ガンバにとってターニングポイントになるはずだ。

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