最下位ガンバ、危うし!「守れず、攻められず」も想定内といえるのか

ガンバ大阪が苦しんでいる。開幕3連敗。ひとつの勝ち点も手に入れることができず、順位表の一番下に、その名前が記された。

昨年のJ1リーグ王者・川崎フロンターレの本拠地に乗り込んだ一戦は、立ち上がりから危うい気配を漂わせていた。

開始早々に右サイドを崩されてMF家長昭博に決定的なシュートを見舞われると、8分にはコーナーキックのこぼれ球をMFエドゥアルド・ネットに蹴り込まれ、早々に失点を喫した。その2分後にもFW小林悠にあわやという場面を作られるなど、大量失点も覚悟せざるを得ない展開となっていた。

その後は相手がペースダウンしたこともあり危険なシーンこそ減ったが、川崎Fにいいようにボールを回されてしまう状況に変わりはなかった。とりわけ縦パスへの対応がもろく、簡単にくさびを通されてはピンチを招いた。

もちろん、川崎Fのボール回しは称賛されるべきクオリティを備えていたが、もっとも危険な縦パスをこれほど簡単に通されるチームも珍しい。まるで攻撃の練習でもしているかのように、ストレスフリーでボールを回す川崎Fの猛攻にさらされて、G大阪は守勢に回るほかなかった。

後半立ち上がりにもカウンターから失点したG大阪は、さしたる反攻を示すことなく、敗戦を受け入れている。

その不甲斐ないパフォーマンスは数字にも表れた。川崎Fのシュート数が16本だったのに対し、G大阪はわずか2本。前半に限ればゼロだった。守れない、攻められない。J1王者が相手だったとはいえ、G大阪の不甲斐なさが浮かび上がる一戦というほかない。

「ある程度ボールを握られるのはしょうがないと思いながらやっていましたけど、もう少しチャンスを作りたかった。攻守両面でもう少し精度を上げていかないといけない」

MF遠藤保仁はいつもどおり淡々とした口調で試合を振り返ったが、課題は山積みであることをうかがわせた。

「正直、これだけガンバらしさの出せない試合が続くとは想像していなかった」

試合後、レヴィー・クルピ監督も落胆の色を隠しきれない。

今季からG大阪の指揮を執るこのブラジル人指揮官は、ライバルであるセレッソ大阪を3度も率いた経験を持ち、かつてブラジル代表の監督候補にも挙がった実績十分の名伯楽だ。

G大阪がクルピ監督を招聘した狙いはよくわかる。2014年に3冠を達成したものの、以降は右肩下がりで成績を落としている。遠藤をはじめ主力の高齢化が進むなか、世代交代の過渡期を迎えており、C大阪時代に香川真司や柿谷曜一朗をブレイクさせた育成手腕を期待してのことだろう。

U-23チームも備えるG大阪には、将来性豊かなタレントが多数控える。クルピ監督もさっそく若手を積極起用しており、17歳のFW中村敬斗をはじめ、MF福田湧矢やMF市丸瑞希といった20歳前後の選手を川崎F戦でもピッチに立たせている。

ただ、その確かな慧眼(けいがん)でタレントの発掘に尽力する一方で、チーム作りはほとんど進んでいない印象を受けた。あれだけ縦パスを入れられてしまったのは組織としてボールの取りどころが定まっていないからであり、シュート2本に終わった攻撃も連動性がなく、FWアデミウソンら前線が単独で仕掛けてはつぶされるケースが目立った。どう守るのか。どう攻めるのか。今のG大阪からはその形が見えてこない。

もっとも指揮官も、現状は若手の起用法を含め、”見極め段階”であることを認めている。

そもそもクルピ監督は、C大阪時代も実戦をこなしながらチームを作っていくタイプの監督だった。システムや組み合わせを変えながら最適解を探り、チーム力を高めていくスタイルだ。

たとえば2010年、昇格1年目のC大阪は開幕から勝ち星に恵まれなかったが、ワールドカップ中断を挟んだ夏場以降に、それまでの3-4-2-1から4-2-3-1にシステムを変更。乾貴士、家長に加え、香川がドイツに移籍したことでチャンスを掴んだMF清武弘嗣の3人による「3シャドー」が機能し、最終的に3位へと躍進。クラブ史上初のACL出場権を手に入れた。

そのケースをなぞれば、G大阪にも大いに巻き返しの可能性はあるだろう。今年もワールドカップ中断があることも幸いする。しかし、クルピ監督は現状を「想像していなかった」という。「想定はしていたが、想像以上に悪かった」のであれば、事態はより深刻かもしれない。

クルピ監督は不振の原因として「中盤のバランスの悪さ」を挙げる。

「井手口が移籍し、今野がケガでいないこともあって、中盤のバランスがまだ取れていない。本来の攻撃力を出せていないのも、中盤のバランスの悪さからきていると思う」

たしかに川崎Fに簡単にボールを回されたのは、中盤にボール奪取に優れた選手がいないことも原因のひとつだった。その能力に長けたMF井手口陽介やMF今野泰幸がいれば、と嘆くのも無理はない。本来であれば、その穴を若手に埋めてもらいたいはずだが、そうした人材がいない。そこに指揮官の想定外が浮かび上がる。

G大阪は3月7日にブラジル人MFのマテウス・ジェズスの獲得を発表した。身長187cmの大型ボランチに、「ポスト井手口」の役割を託すのだろう。もっとも、実績のない20歳の選手がチームを劇的に変えることができるのか。そんな疑問も浮かんでくる。

「まだ時間はかかると思うが、必ず立て直さなければいけない」

指揮官は現状を受け入れ、チームの再建を誓っている。果たして、G大阪に明るい未来は待ち受けているのか。その運命はクルピ監督の手腕にかかっている。

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