ガンバ、クルピ就任を巡る全真相。 長谷川体制終焉を決めたあの試合。

ガンバ大阪は、9月7日に今季限りで長谷川体制にピリオドを打つことを正式に発表した。その後任人事を巡って複数の外国人指揮官の名前が各スポーツ紙で取りざたされたが、実のところ、レヴィー・クルピ氏の一本釣りが水面下で、密かに、そして着実に進行していた。

2年連続の無冠に終わったばかりか、アジアチャンピオンズリーグでも2年連続でグループステージ最下位に終わる醜態。指揮官が、今季の新体制会見でもあえて熱望していた外国人ストライカーの獲得で後手を踏むなど、フロントの認識の甘さが今季の低迷の一因だったのは間違いない。

ただ、セホーン監督招聘時には強化本部のナンバーツーだった梶居勝志強化部長は、その後、強化本部長(当時)の立場で降格を経験。監督人事がクラブの命運を左右することを肌身で知るだけに、後任監督は慎重に、そして速やかに選定を進めて来たのは評価されるべき点であろう。

「ポスト長谷川」はガンバにとって重要課題だった。

もっとも「ポスト長谷川」は2017年のガンバ大阪にとって密かな最重要課題の1つだった。

「次の監督をどうするのかは今年のシーズン始まってからのテーマだった」(梶居勝志強化部長)

継続か、否か――。人事の実権を握る梶居強化部長も今季限りで契約が切れる長谷川監督の処遇をめぐり、ハムレットさながらに揺れていた。

実際、7月末には代理人を通じて契約延長の可能性も伝えていた梶居強化部長だったが、8月に入って、情勢は一変する。

梶居強化部長は言った。

「長谷川体制を継続することも選択肢かもしれないが、さらに次のステージに上がるために、契約が切れるこのタイミングでチャレンジする」

甲府相手の0-1で“長谷川切り”へ傾いた。

ターニングポイントとなったのは0-1で敗れた8月5日の甲府戦である。

残留争いの渦中にある甲府のブロックを崩しきれず、個の打開力を持つ泉澤仁もベンチ外。「新たな戦力を長谷川監督に与えて、今季のサッカーがどうなるかを見て来た」強化のトップは「長谷川切り」へと一気に傾いていく。

1月の新体制会見で「クラブが動いてくれている」と長谷川監督が懇願した外国人ストライカーの獲得は、結局7月にずれ込み、梶居強化部長が白羽の矢を立てたファン・ウィジョまで待つことになった。

また当初はシーズン途中に移籍させる方針ではなかった堂安律がフローニンゲンに期限付き移籍するなど、エクスキューズはあった。ただ甲府戦の内容に、長谷川体制が限界を迎えていたのもまた、事実だった。

ジョルジーニョ、オリヴェイラ、洪明甫らが売り込み。

長谷川監督の退任が発表された翌日、番記者たちの囲み取材に応じた梶居強化部長はこう話した。

「長谷川監督が残してくれた以上の結果を残さないといけないし、後任選びは難しいし、本当に大変」

ただ当時から梶居強化部長の脳裏にあったのは、不倶戴天のライバルをかつて率いたブラジル人指揮官の名前だった。

「急ぐ必要もないし、じっくりと選びたい」

こう番記者たちを煙に巻きながら、9月中旬、ブラジルに渡って面談したのは5人の監督たちだ。かつて鹿島を率いたジョルジーニョ氏やオズワルド・オリヴェイラ氏、元韓国代表監督の洪明甫氏からも売込みがあったというが、梶居強化部長がブラジルで実際に会ったのは5人だった。

セレーゾだけでなくリオ五輪金メダル監督にも接触。

トニーニョ・セレーゾ氏やクルピ氏と言ったJリーグ経験者だけでなく、コリンチャンスを今季ブラジル全国選手権優勝に導くことになる新進気鋭の43歳、ファビオ・カリーレ氏やネルシーニョ氏の実子であるエドゥアルド・バチスタ氏(ポンチプレッタ)、更にはリオデジャネイロ五輪でブラジルを金メダルに導いたロジェーリオ・ミカレ氏(当時アトレチコ・ミネイロ)という豪華な選択肢だった。

ただし、浪人状態にあるセレーゾ氏の手腕はあまりにも不透明な上に、カリーレ氏がコリンチャンスで見せたのは「強化版長谷川サッカー」とでもいうべき、リアクションスタイル。そして、国外の指導経験を持たないバチスタ氏やミカレ氏も、あまりにもリスキーな選択肢である。

「攻撃的なサッカーをするし、若手の起用法にも長けている。最初から自分の中ではクルピを最優先に考えていた」と当初から梶居強化部長が白羽の矢を立てていたのはクルピ氏だった。

「ガンバの選手を率いることに興味がある」

当時率いていたサントスでは、タレント不足もあって堅守速攻の現実的なスタイルを志向していた名将だが、ブラジル国内では「攻撃的なサッカーを志向する」という肩書きが一般的だ。攻撃サッカーの再構築と、若手の育成などガンバ大阪が目指すコンセプトに当初から興味を示した名伯楽も「ガンバの選手を率いることに興味がある」と前向きだったという。

その後、10月末にサントスの監督を解任されるクルピ氏ではあるが、契約は当初から2017年末限り。解任の有無にかかわらず、ガンバ大阪を率いることは決定的だった。

そして12月3日、ガンバは降格した2012年以来となる2桁順位の10位でリーグ戦を終了したタイミングで、クルピ氏の監督就任を発表した。すでに今季の全試合を分析にかかっているというブラジル人指揮官だが、活かすも殺すもクラブのバックアップ次第である。

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