【高円宮杯】辛勝スタートのガンバユース。新監督“ノリちゃん”の独特すぎる指導法とは

「喜怒哀楽をもっと出せ」と選手たちに。

 今季、宮本恒靖監督の後任としてガンバ大阪ユースの指揮を託されたのが、實好礼忠監督だ。現役時代はガンバ大阪ひと筋12年で、指導者としてはトップチームのヘッドコーチやU-23の監督を歴任。“ノリちゃん”の愛称で親しまれる氏の下で、2年ぶりのプレミアリーグWESTのタイトルを目ざすシーズンが始まった。

新体制で、まず目を惹くのがチームの雰囲気の良さだ。チームワークをテーマに掲げ、コミュニケーションを重視。選手同士の会話を増やすだけでなく、「面白いひと。練習を盛り上げてくれるのが上手」(MF芝本蓮)、「毎日、気さくで面白し、優しい」(FW松下亮太)と選手たちが口を揃えるように、監督自らが積極的に声をかけ、明るい雰囲気で練習が進んでいく。「選手目線。僕たちの特徴を分かってくれていて、一人ひとりを大事に思ってくれていると感じる」と証言するのはFW白井陽斗だ。練習で上手く行かないと落ち込んでしまう彼に対しては、優しい言葉をかけてくれるという。

ただ、楽しいだけではない。練習では「喜怒哀楽をもっと出せ」と選手たちに指示を飛ばすなど、ミニゲームで1対1の局面を迎えると激しく削り合い、ときには喧嘩するほどの熱さが求められる。新チーム発足直後は大学勢との練習試合で敗れることが多かったが、試合を重ねるうちに確かな手応えを掴み、アビスパ福岡U-18との開幕戦に挑んだ。

ところが、蓋を開けてみれば、「非常に硬かった。ビックリするくらい。パスがずれることが多かったし、サポートも遅かった」と實好監督が語ったように、目ざすサッカーは機能せずじまいだった。

開幕白星を飾るも表情が晴れない選手たちに。

 開始15分に、白井のパスから芝本がゴールを奪ったものの、なかなか追加点が奪えず、前半を終えた。後半は同点ゴールを奪いにきた福岡の勢いに呑まれ、サイドを何度も崩された。しかし、「守備のところはしっかりできた」(實好監督)と、練習時から徹底してきたゴール前でのクロス対応が効力を発揮。相手のシュートを3本に抑えて、1-0で逃げ切ったのだ。

苦しみながらも勝点3を得たが、選手たちの表情は晴れない。それを目の当たりにした44歳の指揮官は、「初戦に勝てたのにチームの雰囲気が暗い。高校生なんだから盛り上がっても良さそうなのに、沈んでいる。緊張で硬くなって、自分たちのプレーができなかった証拠だと思う。今日、自分のプレーが出せたと言える選手はいないと思う。素直に勝っても喜べない理由を、本当に理解しているのか訊いてみたい」と話した。勝利した事実よりも、自分たちの力を出し切れなかったことが悔まれるからだ。

「改善の余地がたくさんあって、やり甲斐がありますよ」

取材の最後に、ニヤリと笑った實好監督。チームパフォーマンスをいかにして上向かせていくのか。いずれにせよ次節以降は、明るくも厳しい今年のガンバユースらしさを見せてくれるはずだ。

リンク元

Share Button